よくないニュース多いけど、大丈夫?

――今年はいろいろなことが起こっています。コロナ禍は収束しませんが、世界は共存を模索しながら少しずつ経済を回し始めた。ウクライナ問題は長期化しそうです。その影響もありエネルギー供給が不安定になり、食糧危機が叫ばれ、インフレが起こっている。

 株式市場は乱高下するし、為替相場は近年にない円安傾向です。こういうネガティブなニュースばかり続くと、投資は怖い、今は始める時期ではない、投資判断が難しそうと思う人が多くなるのではないでしょうか。

小林 確かに今の時期にあえて投資を始めることはないと思っている方も多いでしょうね。でも、長期投資であれば、足元の環境をそこまで気にしなくてもいい。投資は長くじっくりと続けることで、経済成長と株価上昇の恩恵を受けることができます。そのことを踏まえれば、毎日のニュースに一喜一憂したり、ハラハラしたりする必要はないと思いますね。

 長く運用を続ける前提で、積立投資を「つみたてNISA」などでコツコツ続けていれば、相場が下がった時期は、安く買うことができる時期となり、むしろメリットになります。そこで初心者の方は、積立投資を長く続けること。これを忘れないでほしい。

まずは何から始めればいいの?

――若い人は投資資金が限られます。具体的に、何を、どのぐらいの金額で始めるといいのでしょうか。

小林 おさらいすると、利用する制度は、資産運用の王道「つみたてNISA」。老後資金をつくることが目的なら「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」です。投資対象はインデックスファンド。

 投資資金は余裕資金を使うことが前提です。余裕資金というのは、生活には使わないお金です。若いうちは、余裕資金なんてほとんどないかもしれませんが、「つみたてNISA」は口座をひらく金融機関によっては100円から始めることができます。

 スマホで取引ができるネット証券に口座をひらいて、月100円、あるいは月1,000円というお小遣い程度のお金で始めればいいと思います。

――でも、月100円の積み立てでは、20年、30年続けても資産と胸を張れるほどのお金にはなりませんよね。

小林 100円投資期間は、株式だけで構成されている投資信託(比較的ハイリスク・ハイリターン)と株式と債券で構成されている投資信託(比較的ローリスク・ローリターン)を同時に保有してください。

 半年くらい運用してみると、値動きや利益と損失に差が出てくるので、株式中心だとこんな値動きになる、債券多めだとこんな値動きになると分かる。つまりリスク(値動きの幅)を体感して慣れてほしい。

――今年のように株式市場の値動きが大きいと、100円投資の残高が、株式100%の投信は70円に減ってしまうかもしれない。でも債券多めの投信なら90円で済むかもしれない。そういうことを肌で感じてほしいということですね。

小林 そうやってリスクの感覚をつかんだ上で、投資額、積み立て額を余裕資金の範囲内で増やしていく。「つみたてNISA」の非課税の限度額は年間40万円(月額3万3,000円程度)なので、まずはそこを目指すようなイメージですね。

――国も「貯蓄から投資へ」というフレーズを使って、国民に投資を促しています。「NISA」のような税金面で有利になる制度も作りました。そこまでして投資に力を入れる理由は何なのでしょうか。

小林 「貯蓄から投資へ」の背景には、国内における少子高齢化、人口減少問題があります。年金制度は保険料を負担する現役世代が年金を受け取る高齢世代を支える賦課(ふか)方式ですから、少子高齢化が進行すると、現役世代の人数が減り、高齢者の人数が増加して、保険料負担を増やすか、年金の給付水準を下げることになります。

 もうそういう現実が見えているので、年金に頼り切らずある程度の老後資金は自分で準備してくださいということなのでしょう。

――投資はお金にも働いてもらって資産を増やすことですよね。

小林 そうですね。

自分への投資のほうが大事じゃない?

――でも若いうちは、自分自身の能力を高めるための投資をして、稼ぐ力を高めるという考え方もできますよね。金融商品に投資をするのか、能力を高める投資をするのか、どちらがいいのでしょう。

小林 それはバランスだと思います。学生時代の自分を振り返ると、金融商品に投資することを知らずに、自己研さんのための投資、趣味のための投資をしていました。それを否定するつもりはありませんが、例えば株式投資を始めたことで、自己研さんのための投資では学べないことが学べました。

 バランスを大事にしながら、両方とも経験した上なら、自分は自己研さんに使うお金の比率を高めようとか、自分は投資にお金を回していきたいとか、そういう判断ができるようになります。それも大事かなと思いますね。

――株式投資を経験すると、経済や企業の知識が増えて、社会人として働き出した時に役に立ちますもんね。

小林 若い人は時間を味方に付けることができるので、少額でもいいので、早いうちから投資を経験してください。もしわからないことや不安なことが出てきたら、「BANK ACADEMY」のコメント欄、Twitter、InstagramのDMからも気軽に聞いてください。

――10代の周りには気軽に投資の質問をできる大人がいないかもしれません。いても、適切な答えが得られないかもしれない。だからSNSで聞けるのはうれしいですね。小林さん、今日はありがとうございました。

<教えてくれたのは>

BANK ACADEMY
小林亮平さん

1989年生まれ。横浜国立大学経営学部卒業後、現在の三菱UFJ銀行に入行。ブログやSNSで資産形成にまつわる入門知識を分かりやすく発信して人気になる。現在はYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」の運営を中心に本の執筆など幅広く活動しており、YouTube登録者数は45万人を超える。書籍は資産形成の入門書の「これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生」(KADOKAWA)など多数ある。

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