停戦があっても問題解決に遠い可能性も

 ウクライナでこれから何が起こるか、予想することは困難です。ただし、株の先行きを予想する上で、一定の前提を置くことは必要です。

 私は一時的な停戦は年内に実現する可能性があると想定しています。ただし、それは領土問題を棚上げした一時的な停戦で、恒久的な終戦にはならないと思います。

 領土問題は恐らくこれから数十年を経ても解決できないでしょう。ウクライナが欧米の武器供与を受けて攻勢に転じるとしても、親ロ派勢力(ロシア系住民)が多数を占める地域まで奪還するのは困難かもしれません。領土問題を残したままの休戦が、数十年にわたり続く可能性もあります。そうなると、ロシアに対する経済制裁も完全に解除されることはなく、世界経済へのマイナス影響が残ることになるでしょう。

 それでも、停戦が実現すれば、世界の株式市場はいったん好感すると思います。領土など複雑な問題を残し、ロシア経済の世界からの分断が続く中で、世界経済は成長を続けると思います。これからもこれまでも、世界経済は不当な戦争や搾取を残したまま成長し、株式市場はそれを織り込みながら動くと思います。

 「治(ち)きわまれば乱に入り、乱きわまれば治に入る」。これは、三国志演義に出てくる有名な一節です。「平和が続くと戦争が起こりやすくなり、戦争が続いた後は平和な時代が来る」という意味です。残念ながら当面、世界では戦争が起こりやすい状況が続く可能性もあります。

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