台湾有事リスクは高まったのか?

 最後に台湾問題です。日米共同記者会見で、バイデン大統領が台湾海峡への「軍事的関与」を明言した場面が物議を醸しました。「いよいよ台湾有事か?」のような議論すら生じたほどです。一方、同大統領は過去に2回「米国は台湾を防衛する」と公言したことがあり、発言自体は目新しいものではありません。実際、ホワイトハウス高官は、同発言後、「米国の台湾政策に変更はない」と釈明しています。

 中国外交部は案の定激しく反発しましたが、私が話を聞いた同部幹部は、「想定内」であり、「米国の対台湾政策変更とは理解していない」と回答していました。中国の軍事力増強、拡張的な海洋政策、米中対立などを受けて台湾海峡が緊張している、地政学リスクが高まっている、ウクライナ戦争を受けて、それらが一層不確定になっているのは事実です。これからも予断を許さない状況が続くでしょう。

 一方で、今回の日米首脳会談をもって、台湾海峡をめぐる構造や均衡、日米両国の台湾戦略、政策が変更されたという根拠は見いだせません。バイデン大統領の発言を過大評価しないほうがいいと私が考えるゆえんです。

 日本が東京で主導した一連の首脳外交を振り返ってきました。本稿の最後に、マーケットを読むためのヒントを3点書き下しておきます。投資の参考にしてください。

マーケットのヒント

  1. 中国名指しやIPEFで、米中対立、デカップリング(分断)は一層鮮明になったが、それらがどれだけの効果を見せるか、域内国家が対中対抗にどこまで同調するかは不透明。
  2. 米中対立に伴い、台湾海峡は引き続き緊張状態にある。「台湾有事」に向けた議論や準備も不可欠だが、それでも不安定な平和という現状に変更はない。
  3. 米中対立を受けて、中国はIPEFを含め米国との共働を強める日本に不信感を強めている。しかし、日本との関係を安定的に管理したいという基本的立場に変化は見られない。