安易な買い推奨は危険

 今年に入り、日本株も下落していますが、米国株の下落の方が大きい状況が続いています。日本株に見切りをつけ、米国株を高いところで買ってしまった個人投資家を中心に、大きな痛手を負っているようです。

 最近は動画共有サイト「ユーチューブ」や交流サイト「ツイッター」などで、専門家や個人投資家がさまざまな相場観を発信しています。

 その中で多いのが、株価が下がっている最中にもかかわらず「株価がだいぶ安くなった。今は絶好の買い時だ!」とする買い推奨です。

 ところがその後も株価の下落が止まらず、多くの個人投資家は含み損が拡大し、頭を抱えています。

 2008年9月のリーマン・ショックで大きな損失を被った筆者からみれば、株価が下がったから割安だ、だから買うべきだ、とするこの安易な考え方は極めて危険と感じています。

本当に3~5年待てば戻るのか?

 ネットの掲示板で個人投資家の書き込みを見ると、株価が下がっている途中に買ったり、もしくは株価が高いときに買って放置しているため、多額の含み損を抱えている人が多いようです。

 しかし彼らの書き込みは

「仕方ない。3~5年くらい寝かしておくか。そのくらいたてば株価は元に戻るだろう」

「日本株は厳しいけど米国株は年単位でみたら毎年上昇しているからここは我慢!!」

などと、まるで危機感を感じないコメントが並びます。

 確かにリーマン・ショック後、日本株は大きく上昇しましたし、米国株は日本株をはるかに超えるダイナミックな上昇を遂げました。

 一時的に株価が下がっても確かに数年たてば戻っていましたし、米国株はここ最近毎年のように上昇を続けていたのも事実です。

 でもそれは「過去」の話です。過去はあくまでも過去でしかありません。将来はどうなるか分かりません。

 今まで数年持ち続けていれば株価は戻ったからこれからも同じと断定することはできないはずです。

 米国株が毎年上昇を続けているのは最近の話であって、30年、50年、100年のスパンで株価の動きをみれば、様相は全く異なります。

 株価が毎年下落を続けていた時期、10年以上ほとんど上がらなかった時期、そして世界恐慌のようにダウ工業株30種平均が高値から89%も下落してしまったことだってあるのです。