景気回復の鍵を握るロックダウン動向と中央政府による規制緩和

 中国政府は2022年のGDP成長率目標を「5.5%前後」に設定しています。1-3月は4.8%増と3期連続で5%を割り、上記のように、ロックダウンの影響を直接的に受けている4-6月の数字も芳しいものになるとはなかなか思えません。

 最大の鍵を握るのは、やはり習近平(シー・ジンピン)総書記が4月29日の中央政治局会議で再度強調したように、コロナ抑制策の経済活動への影響を最小化できるか否かにかかっているでしょう。

 例として、上海市でのロックダウンが6月中下旬に向けて、段階的、ただ確実に解除していく過程で、生産や消費が回復するような局面が期待されます。上記で例に挙げた自動車業界に関して言えば、中国全体の自動車の10%が上海で製造されています。

 中国中央電視台(CCTV)の報道によれば、中国最大の自動車メーカーの1つ上海汽車集団(SAIC. 600104;上海)の工場では、5月9日時点で、従業員全体の8割に当たる4,000人以上が職場に復帰、5月末までに通常の業務を再開することを目指しているとのことです。

 同社の職場復帰は例外的に早く、決して、日本企業を含め、上海を拠点にしている企業や工場が同様とは言えません。それでも、生産、労働、消費の現場が徐々にでも活発化していくことが経済再生にとって不可欠だと言えます。足元、北京市や天津市でも1日2桁の新規感染者数が記録されていますが、「第二の上海」が出現するか否かが、中国経済の「次」を占う上で一つの鍵を握るでしょう。

 上海が「ロックダウン解除」に向けたかじを切る中、北京では、5月15日、中国人民銀行(中銀)と中国銀行保険監督管理委員会が、住宅ローン金利の下限を、1軒目を買う人を対象に従来の4.6%から4.4%に引き下げると発表しました(2軒目以降の下限は変わらず)。「不動産市場の安定的かつ健全な発展を促進するため」(中銀)、要するに、低迷する住宅市場をてこ入れして景気を浮揚させる狙いを鮮明にした形です。

 前述したように、住宅販売額は足元で明らかに鈍化しています。不動産や自動車と並んで、個人消費を促す上で要となる商品であるのは論をまちません。実際、私自身の周りを見ても、当局によって定められた住宅ローン金利を巡る規制が原因となり、不動産購入に踏み切れない知人は少なくありません。規制緩和は景気回復に向けて一つの鍵を握るでしょう。

 習指導部としては、景気回復を促すためであれば、打てる政策は全部打つ姿勢をむき出しにしています。これらの措置が、5月、4~6月の統計結果に成果として表れるのか、見ものです。