上海ロックダウン「解除」秒読みは本当か?

 5月16日、4月の経済統計結果を説明すべく記者会見を開いた国家統計局の付凌暉(フー・リンフイ)報道官は、上記の数字は「コロナショックがもたらした短期的変化であり、段階的、外在的なものである」と説明。4月に見舞われた消費の低迷に関しても、「感染拡大が抑制され、生産、生活の秩序が正常な状態に回復していけば、これまで抑えられていた消費が徐々に放出されるはずである。4月中下旬以来、国内の感染状況は全体的に抑え込まれており、上海や吉林でも徐々に好転している。これらは適度な消費環境を創造するのに有利に働く」という見込みを述べています。

 注目されるのはやはり本格的なロックダウン開始(3月28日)からすでに1カ月半以上が経過した上海で、いつそれが解除されるかでしょう。

 5月17日、上海市政府は記者会見を開き、同市内16の地域で「社会面ゼロコロナ」を達成したと主張しました。「社会面ゼロコロナ」とは新しい概念で、政府が重点的に閉鎖管理している地域以外での新規感染者数が3日連続でゼロになることを指すようです。コロナの感染拡大、およびそれを封じ込めるために採用してきたロックダウンが経済活動に及ぼす影響を懸念する同市が、少しでも成果を市内外にアピールするために編み出した造語と言えます。当局もそれだけ必死なのでしょう。

 直近のデータを見ると、上海市における新規感染者数(無症状者含む)は、5月15~17日までの3日連続で1,000人以内となっています。ピークを記録した4月17日が2万7,000人だったことを考えると、感染者数は明らかに減少傾向にあることが分かります。

 今後の展開ですが、同市の宗明(ゾン・ミン)副市長によれば、6月中の全面解除に向けて、これから3段階に分けて、段階的に解除していくとのこと。

 第一段階(5月17~21日):新規感染者数を減らし、感染者数のリバウンドを防ぎ、閉鎖管理区域における人数を減らしていくものの、解除や人の移動は制限し、市全体として低い水準の社会活動を保つ。

 第二段階:(5月22~31日):新規感染者数をさらに減少させ、管理区域の範囲を減らし、感染抑制を常態化した、かつ水準や分野をカテゴライズした管理へと転換させる。

 第三段階:(6月1~中下旬):感染拡大のリバウンドを厳格に防ぎ、リスクを制御する前提で、全面的に常態化管理を実施、市全体の正常な生産、生活秩序を回復する

 中国的な用語で分かりにくいかもしれませんが、ポイントは三つあるように思います。

(1)一気に全面解除するのではなく、地域、業界別に段階的に解除していく点
(2)「全面解除」=「制限なし」ではないという点
(3)期限は確定も、明言もしないという点

 上海市政府は「社会面ゼロコロナ」で成果をアピールしていますが、6月という目安、方向性は掲げるものの、具体的にいつまでに「全面解除」するかは確定できないということでしょう。先週、上海市の高校で教鞭を執る知人と話しましたが、同市教育局から「5月末には生徒たちを復学させるべく準備するように」という通達が非公式に来たとのこと。

 ロックダウンの影響を受け、上海市では大学受験と高校受験が約1カ月延期され、それぞれ7月7~9日、11~12日に実施されることが確定しています。同知人は、「受験の日時が確定したからには、少なくとも受験日の一カ月前には復学し、準備をしなければ間に合わない」と指摘。実際に、上海市政府は、受験生を優先的に復学させる旨を表明しています。

 このように、学生も一気に復学というのではなく、地域や年次別に、段階的に実施していくということなのでしょう。生産や労働の現場、外出や移動の制限を含め、同様だと見て間違いないはずです。「解除」を受けて経済活動がどのくらいの規模、速度、程度で回復したのかを判断できるのは、早くても7月以降になると私は見込んでいます。