シンプルに資産を保全することが自分たちのできる最も重要なことだ

 FOMC(米連邦公開市場委員会)通過後の米国株式市場が波乱相場の様相を呈している。CNNビジネスの「Fear & Greed(恐怖と欲望)指数」は19と「EXTREME FEAR(極端な恐怖)」を示している。とりわけハイテク株の下落が著しい。ナスダック100は年初から25%程度下落している。

恐怖と欲望指数(2022年5月11日時点)

出所:CNNビジネス

ナスダック100CFD(日足)

(赤↑:買いシグナル・黄↓:売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

「明らかに、債券と株式を保有したくない」、これはCNBCの番組に出演したヘッジファンドマネジャー、ポール・チューダー・ジョーンズの発言だ。

 チューダーは、このような厳しい環境下では、事実上何でもいいから資本の保全を優先するよう投資家に警告した。「シンプルに資産を保全することが自分たちのできる最も重要なことだと思う。今は非常に困難な時代になった。実際にお金を稼ごうと努力する時期とは思えない」と述べた。

 彼はFRB(米連邦準備制度理事会)の行動が米国経済を不況に陥れることを懸念している。FRBが金融引き締めを行い、通年で10回の利上げを行うと予想されている。「一方ではインフレ、他方では成長鈍化、これらは常に衝突することになる」とチューダーは指摘した。

FRBの金利引き上げのサイクルと過去の金融危機

出所:ゼロヘッジ

 ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。

 どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。優秀なトレーダーほどリスクコントロールに多くの力を注いでいる。失敗する投資家やトレーダーのほとんどは自分のやっていることのリスクを把握していない。時間を費やし自分が何をやっているかを明確に把握した時、彼らは信じられないほどの成功を手にすることになるだろう」

「自分はうまいなどと思ってはいけない。そう思った瞬間に破滅が待っている」

「ナンピンをしないこと。トレードがうまくいかないときは枚数を減らすこと。うまくいっているときには枚数を増やすこと。コントロールができないような局面では決してトレードしないこと。例えば、私は重要な発表の前には多くの資金をリスクにさらすようなことはしない。それはトレードではなくギャンブルだからだ」

「もし損の出ているポジションを持っていて不快なら、答えは簡単だ。手仕舞うだけだ。いつでも相場に戻ってこられるのだから。新鮮な気持ちでスタートを切るのに勝るものはない」

「史上最高の投資家、ジェシー・リバモアは長期的には相場では決して勝てないと言ったと伝えられている。相場に決して勝てないという考え方は驚くべき見方だ。だからこそ私の哲学は巧みな防御なのだ。自分が超人的な洞察力を持っているなどと思ってはいけない。常に自信を持っていなくてはならないが、注意を怠ってはいけない」

(ポール・チューダー・ジョーンズ)