波乱相場への対応

 不確実性と、非連続的なシナリオ分岐多発の相場にどう臨むのかを整理します。相場で起こった分岐は、後悔先に立たずと、常に受け入れて次の対応を考えるのみです。ただし、向こう何カ月たってもファンダメンタルズは不透明なままで、インフレ、金利、景気、有事についてらちがあかない可能性が高いとみています。したがって逆に相場は、行動学的な相場復調リズムの探索に力点を置いて観察しています。相場が実際に上向けば、それを追認する情報環境とともに、その持続性をフォローするのみです。

 なお、筆者は相場展開を「超金融相場に超業績相場混在⇒中間反落+有事下落⇒うまくすれば不安定で短命化の恐れのある業績相場もどき1~3カ月⇒6~12カ月以降は逆金融・逆業績相場リスク」という流れでご案内してきました。おそらくちまたではこれから、米長期金利が景気中立(のコンセンサス)を超える3%台まで上昇して早くも逆金融相場、あるいは、企業決算にも陰りが見えるので逆業績相場という言葉が増えるでしょう。

 しかし金融相場と業績相場の混在、インフレ先行での金利先高感、さらに有事のかく乱があり、中間反落に逆金融相場、逆業績相場の様相が混在しています。ファンダメンタルズが錯綜する状況で、用語を厳密に捉える必要はなく、柔軟に相場地合いを優先して観察するべき局面と心得ます。

 このような難局で、不安に駆られてどうしたらよいのか分からない、あるいは、果たして投資をすべきなのか、こんな質問をよく頂きます。不安の源泉は、波乱相場自体ではなく、そこに巻き込まれるポジション(=リスク)の不安定な損益状況にあります。あえて淡々と申し上げますが、ポジションを抱える投資家は、中間反落のような下げ局面においては対応が遅れるほど、選択肢が達観してホールドするか、痛いけれども(部分か全部か)損切りないしヘッジするかに限られます。

 筆者は、2020年の超金融相場を見て、その後の典型的な反落リスクに警鐘を鳴らす「逃げて勝つ 投資の鉄則」(日本経済新聞出版刊)を出版しました。買うのみで売り方を考えない個人投資家は少なくありません。投資はリスクをとる行為です。後学のためになると思われる方は、教訓として実感できる時にぜひご一読ください。

 ポジションを売り抜けるなどして持たない人なら、不安はなく、買い場を探すのみですが、難しいから無理をしない、何もしないという選択もあるでしょう。買い向かうことを思案中の人も、相場を当てにいく環境ではないことを重々踏まえておく必要があります。金融相場期のように一獲千金を目指す分かりやすい局面ではありません。

 また、もし中間反落過程での損失を挽回しようと、過大なリスクを抱える場面でもありません。あくまで、相場にはどのような場面でもチャンスはあるので、それを取りこぼさないため、そして、市場の状況をチェックするために、何らかのポジションを持つまで。そして、相場下落リスクに強い銘柄、この状況だからこそ生じるトレンドに沿ったテーマを慎重に選別し、リスク管理下で資産保全優先(の攻め)に徹するべき時です。

■著者・田中泰輔の新刊『逃げて勝つ 投資の鉄則』(日本経済新聞出版刊)が発売中です!