市場の情報処理の仕方

「相場は自らを正当化する」、これは下げ局面にも当てはまります。なぜ相場が下がったかを説明するために、下げ材料が強調的に語られます。実際4月に相場が反落すると、景気の先行き、インフレ高止まり、企業業績、有事などなど、どれについても、先行き不安は払拭(ふっしょく)されていないという論調に転じました。

 個別銘柄テーマでも、依然高く上がってもてはやされたものが、その分だけ落差が大きく調整されると、評価があっさり手のひら返しされがちです。堅調な需要の裏打ちがあるとされた半導体銘柄は、中国需要減退、有事での材料調達難、在庫増などを理由に、底割れの恐怖の対象にされています。金融銘柄は、金利上昇で恩恵ありとはやされていたのが、1~3月の相場波乱で市場業務や投資銀行業務の収益が怪しいといった具合です。

 どれも相場が下げれば、それを追認する情報解釈が優勢になりがちです。留意したいのは、相場がなぜ上がったのか下がったのかという原因を語るようでいて、その実、相場の上下動の結果が原因を後付けで決めてしまう因果逆転の情報処理になることです。

 情報処理システムとしての市場は、全ての情報をいつもバランス良く織り込んでいるわけではありません。相場が上がる時には上げ材料を、下がる時には下げ材料を殊更に強調する時間差処理が基本です。そして相場追認の情報解釈ですから、原因を語るようで、相場の動き自体が原因を決めつけることになりがちです。

 こうした情報処理のゆがみを、情報発信する専門家やメディアの問題とするのは筋違いというものです。情報の受け手もまた、相場が上がっている時に下げ材料を伝えられても、「何を現状に合わない屁理屈を言っているのか」と受け入れないでしょう。「相場追認の因果逆転解釈を時間差で処理する」のは、市場の情報処理の常態です。文句を言っても変わることはありません。時間差処理なら、上下両局面の解釈を均してバランスを取るなど、常態システムとして受け入れるのみ。その上で、逆手に取るだけの臨み方を磨くか、とりあえず市場で信じられている共同主観の相場に乗るか、自分自身の処置に落とし込むのみです。