李克強首相が企業家を集めて経済情勢・対策に関してヒアリング

 情勢が不透明なとき、党・政府の指導部は往々にして定例、非定例を含め「座談会」という場を活用して市場関係者にシグナルを送る傾向があります。今回もそうでした。

 まず4月7日、李首相が北京で経済の専門家や企業家を招集、経済情勢と対策について話し合いました。招集される関係者は毎回異なりますが、今回は中国物流集団、中国農業生産資料集団、青島創新奇智科学技術公司といった企業の責任者が呼ばれました。昨今の情勢下で、李首相が物流、食料、科学技術といった分野に懸念を抱いているのが見て取れます。

 昨今の経済情勢から、私が注目した李首相による指摘は次の3点です。1つずつ解説していきます。

(1)「昨今の世界情勢は複雑に変化しており、国内の新型コロナも感染拡大している。いくつかの突発的要素は予想を超えている。経済の安定的運行により大きな不確実性と課題を投げかけている」

「予想を超えている」という表現は見慣れないもので、中央政府の首長として、ウクライナ情勢や新型コロナの感染拡大をめぐる状況が、李首相自身の予想を上回る形で展開しているという危機感がにじみ出ています。

(2)「物価を安定させるために、食料生産、エネルギー供給、物流の円滑な運行といった肝心な点をしっかりと掌握しなければならない」

 上記で指摘したように、インフレリスクが高まる中、物価の安定は最重要事項の一つであり、その意味で、目下価格高騰が懸念される食料、エネルギー問題、そして新型コロナの影響を受けたサプライチェーンの問題をいかに処理するかがカギを握ると李首相が考えている現状が見て取れます。

(3)「石炭の先進的な生産能力をより一層解放し、石炭や電力企業がより多く発電できる政策を実践していくことで、エネルギーの安定供給を保障する。政策協調を通じて主要な交通路、港といった要となるインフラの秩序ある運行を保障し、貨物車の運転手をサポート、貨物経営者の困難緩和、物流コストのカットといった分野で、ピンポイントで措置を取るべく検討することで、国内外の物流を円滑に運行させ、産業網や供給網の安定を維持していく」

 昨年下半期からの電力不足を受けて、大気汚染の緩和などグリーン経済の推進は放棄していないものの、現状下でまずは化石燃料を含めたエネルギーの安定供給を優先するという方針がはっきりと見て取れます。

 環境よりも景気優先、とも言えます。新型コロナの感染拡大や一部ロックダウンを受けて、やはり中央政府としては物流や供給網が景気低迷の足かせになると踏み、そこに照準を合わせて対策を取ろうとしているのでしょう。