為替DI:4月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「4月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、4月のドル/円は「ドル高/円安」になるとの回答が、全体の68%を占めました。円安見通しは、3月に比べて大幅に23ポイント増えました。

ドル安/円高」は全体の15%で、先月に比べて10ポイント減りました。17%は、「変わらず(わからない)」との回答でした。

2022年最大のリスクは?

 金融市場にとって、今年最大のリスクとは何か? オミクロン変異株でもウクライナ戦争でもありません。それは「中央銀行」です。先の読めない中央銀行の政策が、金融市場を不安にさせボラティリティを高めているからです。

 新型コロナとウクライナ戦争は、多くの国の経済にとっては、エネルギー価格の高騰を通じたインフレと景気後退のリスクとなって現れました。そして世界の中央銀行は、「利上げ」か「景気対策」かという、矛盾する2つの政策の選択を迫られています。

 FRBは3月15、16日に行われたFOMC会合において、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利を0.25ポイント引き上げることを決定。パウエルFRB議長は記者会見において、1980年代以来40年ぶりとなる米国の大インフレに立ち向かう中央銀行の強い意志を示しました。

 FOMCメンバーが予想するFF金利の見通しは、パウエル議長以上にタカ派でした。ドットチャートが描く2022年末のFF金利は1.875%で、3カ月前の0.875%から大幅に上方修正。1回の利上げ幅を0.25ポイントとすると、利上げ回数は今回も含めて3回から7回へ引き上げられたことになります。

 これは今年残り6回の全ての会合で利上げを実施することを示唆しています。さらに2023年末のFF金利見通しは2.75%となっているので、来年はさらに追加で3.5回の利上げを予想しています。

 ドットチャートに関してもうひとつ興味深い点は、金利予想のレンジ幅が昨年12月時点の0.75ポイントから1.75ポイントへと大きく広がっていること。

 FOMC会合でただ一人0.50ポイントの利上げを主張したタカ派中のタカ派であるセントルイス連銀のブラード総裁が、3.125%という突出した予想を出したことが大きな理由ですが、金利予想の大きなバラつきは2023年以降も見られます。

 FOMCメンバーの見解が大きく割れているのは、それだけ米経済の先行きが非常に不透明だということです。FRBの金融政策も先が読めず、企業や長期投資家にとっては大きなリスクといえます。

 2022年の米経済の成長見通しは、12月時点の4.0%から2.8%に引き下げられましたが、それでも長期トレンドを1.0%上回っています。2023年と2024年はそれぞれ2.2%と2.0%。失業率については、2022年と2023年は3.5%で12月時点から変更なし。2024年は0.1ポイント上昇して3.6%の予想。

 予想からわかるように、FRBは、米経済は堅調な拡大を続け失業率は完全雇用の水準が続くと予想していることになります。別の言い方をすれば、利上げとウクライナ戦争に米経済が影響されることは「ない」ということになります。

 バランスシート縮小も5月から始まる可能性が高いです。強気一辺倒のFRBですが、本当に大丈夫なのでしょうか? このペースで金融引き締めを進めるならば、米国はほぼ確実にリセッション(景気後退)になるという懸念も増えています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケート調査によると、4月のユーロ/円は、個人投資家の49%が、「ユーロ高/円安」になると予想しています。ユーロ高予想は、先月から大幅に22ポイント増えました。

ユーロ安/円高」は19%で、先月から23ポイント減りました。

 32%は「変わらず(わからない)」との回答でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケート調査によると、4月の豪ドル/円は、個人投資家の48%が、「豪ドル高/円安」になると予想しています。豪ドル高予想は、先月から大幅に19ポイント増えました。

豪ドル安/円高」は12%で、先月から7ポイント減りました。

 全体の40%は「変わらず(わからない)」との回答でした。