4月に注目したい「グロース株」の動き

 惜しまれつつ(?)、これまで長く続いた市場区分「マザーズ」「ジャスダック」が廃止となり、4月4日より新しい市場区分がスタートしました。このコラムは、新興株をフォーカスしてきましたので、今後は「グロース」に絞って追いかけていきたいと思います。

 改めてですが、今回の市場区分見直しでジャスダックのスタンダード銘柄(ワークマンやマクドナルドなど)は東証2部と統合し、東証スタンダード市場に区分されました。今後、新興株と呼ばれるのは、東証グロース市場に区分されたマザーズ銘柄とジャスダックのグロース銘柄になります。

 銘柄数は、旧マザーズ銘柄が429で、旧ジャスダック・グロース銘柄が34。合体させて463銘柄の市場が東証グロース市場です。変わることと変わらないこともあります。変わることは、市場区分の名前(だけ?)。変わらないことは、東証マザーズ指数の算出は継続しますので、地合いを見るときは「マザーズ指数を見る」というルーティン。

 細かいルール変更はありますが、マザーズ指数は残ります。東証によれば、2023年10月最終日の段階で名称を変更したいようです(仮称ですが「東証グロース市場250指数」に変更)。この仮称にあるように、ルール変更として、マザーズ指数の構成銘柄を上位250銘柄に絞ることが決まっています。

 全体の4割削減くらいの大胆なリストラ。では、250銘柄だけのマザーズ指数になるのはいつから? ですが、「2023年4月最終営業日」です。

 250銘柄に絞る基準は、「上場時価総額」と決まっています。どの時点か? でいえば、今年8月末です。まだ5カ月程度ありますが、仮にマザーズ指数に残りたい企業の場合、この時点までに時価総額を高めておく必要があります。

 上位250銘柄に入るための目安となる時価総額ですが、4月4日時点の250位はセキュアの時価総額63億円。8月までの株価変動で目安は変化しますが、このサイズのグロース市場銘柄に関しては、新しいマザーズ指数に残留できるか微妙といえます。

 時価総額は「株価×発行済み株数」ですので、株価を高めるか、発行済み株数を増やすか(新株発行で株数を増やすと希薄化で株価が下がるため、これはNG)…株価を高める一択と言えますので、IRを頑張る(リリースを増やす、充実した説明資料を作るなど)、投資家が喜ぶ策を示す(株式分割や株主優待など)といったポジティブな変化に期待したいところ。

 時価総額60億円前後の小型銘柄で、会社側の姿勢に変化を感じた場合、今まで以上に注目できそうです。

 マザーズ指数のルール変更でいえば、東証グロース市場に区分されたジャスダック・グロース銘柄が自動的にマザーズ指数の構成銘柄になることも挙げられます。追加されるタイミングは5月末・6月末の2段階。マザーズ指数連動型のパッシブファンド規模は大きくないのですが、ETF(コード番号2516)の純資産で約180億円あります。

 マザーズ指数に加わることで、理論上は(薄いながら)買いインパクトが発生すると考えられます。流動性の極端に低いジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、ストリームメディア、カルナバイオ、BRUNOなど旧ジャスダック・グロース銘柄にはポジティブ材料といえます。

 さて、4月のグロース株市場。3月後半から始まった強烈リバーサルの名残は、4月も引き継いで始まっています。原油価格の上昇に一服感が出たことで、インフレ加速懸念が緩み、米長期金利の上昇にも一服感が出ています(とはいえ、高水準ですが)。

 そのタイミングで年度が替わったことで、東証プライム市場でもウエートを高めてきた高配当系の大型バリュー株を売却し、ウエートを落としてきた高バリュエーション系の大型グロース株を買うといった動きが起きています。下げがきつかった分の「戻り余地」に、まだ魅力アリ! と感じている投資家は多そうです。

 ただ、これも毎度のことですが、この市場は短期売買前提のプレーヤーばかりで作られています。そのため、値動き悪化で簡単に引き潮になるのがグロース株市場。それでいえば、次の5月FOMC(5月3~4日)接近に向けた地合い変化には日々注意すべき。まだ、このタイミングでの利上げ幅が0.25%なのか、0.5%なのかコンセンサスが固まっていません。

 要人発言にコンセンサスが揺らぎやすいうえ、FOMCが日本の大型連休(GW)に重なるのも心配。また、グロース株にとって決算発表は鬼門ですが、GW明けに決算発表ラッシュ(しかも3月決算企業でいえば本決算)となります。

 手前で警戒感(グロース株の場合は手じまいは「売り」)を高める可能性は高く、今起きているリターンリバーサルを4月いっぱい維持…これはさすがに想像しがたいと言えそうです。