3月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

「月前半に起きた動きが、(アンワインドで)月後半に逆回転する」というのはよく起こることですが、3月はまさにそれ。前半安→後半高の展開でした。3月第2週にかけて、世界的に株安地合いが加速。

 売り材料は、ウクライナ情勢と利上げとオミクロンの大きく3つでした。とくに、ウクライナ情勢の悪化から暴走し始めた原油価格が一番の懸念に。ロシアのウクライナ侵攻による供給懸念から、原油先物が急騰(3月7日、WTI原油先物は一時1バレル130ドル台)。

 インフレ高進は幅広い個別企業のコスト増要因になります。日本株市場でも資源株を除いて全部安といった雰囲気が広がりました。

 その悲観ムードも、3つのリスクがほぼ同時に後退したことで月後半に薄れました。停戦期待が徐々に高まるなかで原油上昇が一服し、日本では“まん延防止”の全面解除が決まり、そして16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を通過(0.25%利上げを決定)。

 相場の特性ですが「知ったら仕舞い(今回は「知ったら買戻し」)」で、今回は事前にたまっていたのが売りポジションですので巻き戻しで“株高”になります。日本株市場で海外勢の売りポジションが最も積まれるのは「日経平均先物」ですが、これが巻き戻されたことで日経平均株価は3月第3週、第4週の2週間にわたって全部高(怒涛の9連騰!)。

 月間騰落率でいえば、後半の強烈巻き返しで日経平均株価が+4.9%、TOPIX(東証株価指数)3.2%。新興株市場では日経ジャスダック平均も+2.4%とプラスで着地。そして、毎月最弱だったマザーズ指数は…+8.9%とベストパフォーマーに! これがリターンリバーサル相場だったことをよく表しています。

 リバーサル局面では、「下がった銘柄のリバウンドを狙う」というのがテーマになります。破壊的に下がった反動は大きく、マザーズ指数は3月安値(3月15日653ポイント)から3月高値(3月31日791ポイント)まで、ほぼ半月で指数20%超上昇に!

 3月は期末配当が集中する時期ですが、高配当株など皆無のマザーズには権利落ちも関係無し。また、インフレ加速懸念が月後半薄れたことが大きかったといえそうです。それは、「ウクライナ情勢悪化→原油高(インフレ加速懸念)→長期金利上昇→米グロース株下落→マザーズ下落」の逆回転になるため。

 ウクライナ情勢と最も遠い存在であるはずの日本の新興株ですが、今回の地政学リスクとの感応度は高かったと振り返られます。

3月の売買代金ランキング

「もうマザーズ触るの止めよう」なる悲観色に包まれていたのが3月前半。7日の売買代金1,040億円は今年最低で、15日にマザーズ指数は3月安値を付けました。そこから月後半はリターンリバーサル相場に一転。3月末の高値に向け、売買も増加しました。

 マザーズ市場の特徴ですが、値上がりと売買増加が順相関になります。30日の売買代金は今年最大の2,300億円まで膨らみました。マザーズ市場の1日当たり売買代金平均は昨年12月の1,920億円から減少を続け、2月は同1,399億円。月前半の低迷が響いたとはいえ、3月は同1,473億円と前月比増加に転じました。

 3月後半のようなリターンリバーサル相場になると、マザーズの個別株で盛り上がるのは大きく2パターン。1つが、知名度の高い主力級銘柄(メルカリ、HENNGE、フリー、BASE、ウェルスナビなど)。こうした銘柄の特徴は、サイズ感(時価総額)や流動性があるため、ヘッジファンドも参戦することが挙げられます。

 もう1つが、個人の知名度が高い、これまで大きく下がった銘柄(グローバルウェイ、サイエンスアーツ、直近IPOなど)。こうした銘柄は、動き始めると個人の短期マネーがどんどん集まり、仕手株化します。

 リターンリバーサル相場では、有名であること(視聴率が高いこと)が何より勝ると感じさせるランキングに。ちなみに、この2パターンの違いは、前者は盛り上がっても信用規制(増担保規制)がかからない、後者は信用規制が発動しやすい(個人の信用買いが大半のため)ことでしょうか。

市場 コード 銘柄名 3月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間
騰落率
東証マザーズ 4385 メルカリ 3,225 5,162 151.2 -9.2%
東証マザーズ 2158 FRONTEO 2,032 798 110.8 10.7%
東証マザーズ 4485 JTOWER 7,240 1,593 91.6 77.9%
東証マザーズ 4268 エッジテクノ 1,681 177 70.7 271.1%
東証マザーズ 3936 グロバルウェ 580 211 48.2 138.7%
東証マザーズ 4493 サイバセキュリ 2,186 205 44.0 26.1%
東証マザーズ 4477 BASE 447 499 43.7 7.5%
東証マザーズ 4270 BeeX 3,210 71 40.0 -40.6%
ジャスダック 6890 フェローテック 2,751 1,228 33.6 15.2%
東証マザーズ 4475 HENNGE 952 309 33.1 13.3%
東証マザーズ 4412 サイエンスアーツ 3,785 127 32.4 -37.3%
東証マザーズ 7370 Enjin 3,275 242 29.1 15.1%
東証マザーズ 9250 GRCS 6,030 79 27.0 116.8%
東証マザーズ 4478 フリー 4,395 2,476 27.0 15.2%
ジャスダック 1407 ウエストHD 4,840 2,228 26.4 13.1%
東証マザーズ 7342 ウェルスナビ 2,073 979 26.4 21.2%
ジャスダック 2702 マクドナルド 5,070 6,741 26.3 2.6%
東証マザーズ 2438 アスカネット 1,404 245 26.2 10.9%
東証マザーズ 4592 サンバイオ 1,205 624 26.1 -35.3%
東証マザーズ 4194 ビジョナル 7,560 2,713 23.7 -9.2%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 メルカリ(4385・東証マザーズ)

 マザーズ指数の下落を先導したマザーズ最大ウエート銘柄。マザーズ指数が3月安値を付ける前日14日、メルカリ株も昨年来安値2,627円まで値下がりしました。この株価は、2020年4月以来の低水準。巣ごもりメリット株としてコロナラリーで上がった分のほぼ全部を失った格好でした。月後半はリバウンドに転じましたが、ここからの焦点は?

 気になるのは、アナリストの同社株に対するトーンが落ちていること。一部大手証券では25日、目標株価を7,300円から4,200円に大幅に引き下げました。理由は、まん延防止の終了。成長が鈍化している国内事業ですが、外出増によって復調に時間がかかると見ているようです。

 そのほか短期のカタリストでは、東証プライム市場への上場承認に注目。上場申請のタイミングからすれば、4月後半辺りに承認となる可能性も。

2 JTOWER(4485・東証マザーズ)

 株価指標(予想PERやPSR)で説明しようが無いハイパーグロース株。年初来の下落率も突出して大きく(15日に付けた安値3,190円は前年末終値の3分の1以下)、ヘッジファンドによる空売り対象だった可能性も高そうです。

 そんな同社株が、信じられない大転換で火柱高を演じました。きっかけは、NTTドコモの保有する通信鉄塔(最大6,002基)を1,062億円で取得するという25日引け後の発表でした。これで、翌日から2日連続ストップ高買い気配、上限のみ制限値幅4倍拡大となった30日に全株一致。

 25日終値4,330円に対して30日始値は7,480円と、材料一発で70%超の爆上げとなりました。

 手前でたまった空売り分の買戻しに加えて、今回の発表を日系、外資系ともアナリストが高く評価したことで新規買いも集まったと見られます。

 取得するNTTドコモの鉄塔が全国の郊外にあり、NTTドコモだけでなく他キャリア(KDDI、SBM、楽天M)もシェアリングに加われば、利益貢献度が大きくなります。「業績成長が想定より5年前倒しで進むことが示唆されたためポジティブ」との見方など聞かれました。

3 エッジテクノロジー(4268・東証マザーズ)

 2月17日マザーズ上場の直近IPO株で、上場後は最悪級地合いに飲まれて低迷していました。公開価格350円に対して初値は694円と高く付きましたが、マザーズ指数が底入れする15日まで株価は540円前後で低空飛行。それが、30日に付けた上場来高値で1,857円まで駆け上がるとは…恐るべしイナゴパワー。

「買いが買いを呼ぶ」とはよく言いますが、売買代金ランキング上位に名を連ねることで、知名度(視聴率)が上がり、参加者が増えます。これを繰り返すわけですが、急騰前の時価総額が50億円程度だったこともあり値段が飛びました。

 また、マザーズのムードが好転する直前、13日に第3四半期決算を発表。営業利益は1.5億円と、通期予想1.6億円に対する進ちょく率96%の好決算でした。上場後最初の決算発表で強い数値を示していたことも、数ある直近IPO株の中で優先された理由といえそうです。

4 サイバーセキュリティクラウド(4493・東証マザーズ)

 ロシアによるサイバー攻撃や、トヨタ系部品会社のサイバー攻撃被害を受け、2月後半より急浮上したテーマが「ネットワークセキュリティ」でした。このテーマのど真ん中銘柄だったのが同社で、2日はマザーズ市場でも売買代金トップの大商いに。

 国内1万5,000以上のサイトを対象とした同社調査によれば、ロシアのウクライナ侵攻(2月16日)以降、不審な攻撃者による不正アクセスが急増。直近3カ月平均と比べ最大25倍の攻撃が検知されたといいます。

 サイバー攻撃遮断のため、同社のクラウド型WAF「攻撃遮断くん」の導入が増えるとの思惑が株価に練り込まれました。ただ、今後の決算発表に対するハードルは上がった印象です。

5 ウェルスナビ(7342・東証マザーズ)

 赤字ということもあり、マザーズの高バリュエーション主力株として売り込まれてきた銘柄。16日に付けた安値1,341円は、IPO時(2020年12月)の初値1,725円を大幅に下回る水準です。まさに価格破壊状態で崩れましたが、マザーズ全体の反転とともに同社株も急回復モードに。

 3月後半のリバウンド局面で最も上昇したのは29日(前日比15%高)でした。前日28日引け後、ロボアドバイザー「ウェルスナビ」の預かり資産が25日時点で6,500億円を突破したと発表したことでした。長期投資や積立投資で人気の米国株指数も、3月前半にかけて大きく値下がり。

 値下がりで預かり資産は自然減少しますが、それを上回る資金流入があったということ。世界的な株価下落時に、「安値圏で買っておきたい!」という個人投資家の逆張りニーズは高いようです。

3月の株価値上がり率ランキング

 3月後半のリターンリバーサル下で、狙い目となったのは「それまでの下げが大きかった銘柄」。市場でいえば、ジャスダックではなくマザーズ。3月の値上がり率ランキング上位20銘柄中、マザーズが19銘柄を占めました。その上昇率も圧巻で、トップのエッジテクノロジーの3.7倍のほか、2倍以上となった銘柄だけで5銘柄も輩出しました。

 リターンリバーサルというのは、「大きく値下がりした銘柄のリバウンドを狙う」に照準が当たります。これ、ファンダメンタルズと一切関係の無い話。下げていた銘柄の中で、短期資金が集まっている銘柄ほど優先度が高くなります。

 業績やバリュエーションから見て「なんでこんなに上がるの?」は関係無しの期間ですので、「なんでこんなに上がるの?」と感じる銘柄ほど強く上がる…そんな地合いでもありました。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
3月末
終値
前月末
終値
時価総額
(億円)
東証マザーズ 4268 エッジテクノ 271.1% 1,681 453 177
東証マザーズ 3936 グロバルウェ 138.7% 580 243 211
東証マザーズ 4393 バンクイノベ 125.5% 4,265 1,891 169
東証マザーズ 9250 GRCS 116.8% 6,030 2,781 79
東証マザーズ 6579 ログリー 106.8% 887 429 34
東証マザーズ 4417 グローセキュ 87.6% 5,160 2,751 172
東証マザーズ 3491 GA TECH 83.4% 1,350 736 488
東証マザーズ 4170 KaizenPF 81.1% 650 359 107
東証マザーズ 4057 インタファクトリ 80.0% 1,100 611 44
東証マザーズ 7050 フロンティアI 78.4% 3,410 1,911 158
東証マザーズ 4485 JTOWER 77.9% 7,240 4,070 1,593
ジャスダック 3350 RED 77.1% 62 35 35
東証マザーズ 4055 ティアンドエス 69.6% 2,195 1,294 168
東証マザーズ 4371 CCT 69.0% 5,780 3,420 451
東証マザーズ 1447 ITbookHD 67.1% 625 374 140
東証マザーズ 7133 ヒュウガプラ 64.0% 6,870 4,190 239
東証マザーズ 4054 日本情報 62.4% 1,260 776 180
東証マザーズ 4381 ビープラッツ 60.4% 1,437 896 34
東証マザーズ 4020 ビートレンド 58.9% 3,015 1,898 33
東証マザーズ 9246 プロジェクC 54.7% 4,465 2,887 252

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 バンク・オブ・イノベーション(4393・東証マザーズ)

 待望の新作スマホゲームへの期待が引き続き買い材料に。同社にとって約5年ぶりとなる新作スマホゲームが「メメントモリ」(呪いに満ちた世界を魔女と救うRPGだそうです)。事前登録者数が今年1月中旬に10万人を突破していましたが、2日には20万人を突破したと発表しました。

 事前登録者数を集め、第3四半期(4~6月)内にリリースするようです。同社では、中長期的に成長するため、日本国内では月額課金高5億円以上の規模を最低1年推移させることを目指して開発を進めていると。

 今期の業績予想は開示していませんが、前期の売上高実績は21億円程度。月額5億円課金で1年推移できれば年間売上60億円ですので、業績インパクトは絶大! これに対する期待を織り込んできていますので、リリース後のセールスランキング次第で波乱も起きそうですが…。

2 GRCS(9250・東証マザーズ)

 2月下旬から、サイバーセキュリティクラウドなどネットワークセキュリティ関連銘柄が人気化。このテーマにおける循環物色では、後発で動意付いたのが昨年11月上場の同社でした。公開価格3,600円→初値5,400円→上場来高値1万3,000円と上場後順調だった株価も、2月に付けた上場来安値は2,428円。

 高値から8割以上値下がりしていたこともあり、リターンリバーサルの地合いにもマッチした面はありそうです。

 同社の社名は、G(ガバナンス)、R(リスク)、C(コンプライアンス)、S(セキュリティー)に由来しています。企業のリスク管理やセキュリティ関連プロダクトの開発を手掛けていて、なかでもセキュリティ領域を主力としています。

 とはいえ、事業規模は小さく、16日より信用規制(増担保規制)がかかったことからも、買い主体は個人の信用買い(短期マネー)といえそうです。

3 ログリー(6579・東証マザーズ)

 月間でプラスとなったのは7カ月ぶりでしたが、久々の上昇がド派手な上昇率に。ログリーといえば、2020年8月・9月に演じた大相場が記憶にあるかもしれません。2020年10月には高値で5,900円まであった株価が、今年2月の安値は386円…“逆テンバガー”以下になって、時価総額も20億円を下回る超小型株となっていました。

 当時の大相場の起点は決算サプライズで、ストップ高買い気配2連発により値幅制限4倍拡大が適用され、株価位置が変貌しました。今回は決算ではなく、会社側のリリース。同社は3日、ネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」で、3rd Party Cookieに依存しないコンバージョン計測方法を開発したと発表しました。

 時価総額が20億円未満の軽量感からか、まさかのストップ高買い気配2連発。1年7カ月ぶりの上限値幅4倍適用に。

4 フロンティアインターナショナル(7050・東証マザーズ)

 下げ過ぎ反動で急騰する銘柄が大半のなか、好決算も刺激材料になったのが同社。とはいえ、決算発表タイミングが14日引け後と、マザーズ指数底入れとドンピシャで重なったわけですが…。

 14日、第3四半期の営業利益が前年同期比3.7倍の23.35億円に急拡大したことを発表しました。通期予想(29.5億円)に対する進ちょく率は79%と順調で、マザーズ底入れと相まって翌15日はストップ高に。昨年9月急騰時の高値をブレイク、残る上値目標は2019年のIPO直後に付けた最高値4,030円だけに。

5 CCT(4371・東証マザーズ)

「株式分割でここまで上がるの?」という意味では、珍しいほど好パフォーマンスな前例を作ったといえそう。同社は2月25日引け後に、3月末の株主を対象とした株式2分割を発表。これを受けて、翌28日はストップ高買い気配、全株一致したのが3月の月初1日でした。

 株式分割発表後の全株一致、ここで買っても月末終値までで約60%も値上がり。月後半はマザーズ市場の地合い好転も追い風になったとはいえ、分割発表で噴き上がったところのジャンピングキャッチ(高値づかみ)が大勝利となることもあるようで…。

4月に注目したい「グロース株」の動き

 惜しまれつつ(?)、これまで長く続いた市場区分「マザーズ」「ジャスダック」が廃止となり、4月4日より新しい市場区分がスタートしました。このコラムは、新興株をフォーカスしてきましたので、今後は「グロース」に絞って追いかけていきたいと思います。

 改めてですが、今回の市場区分見直しでジャスダックのスタンダード銘柄(ワークマンやマクドナルドなど)は東証2部と統合し、東証スタンダード市場に区分されました。今後、新興株と呼ばれるのは、東証グロース市場に区分されたマザーズ銘柄とジャスダックのグロース銘柄になります。

 銘柄数は、旧マザーズ銘柄が429で、旧ジャスダック・グロース銘柄が34。合体させて463銘柄の市場が東証グロース市場です。変わることと変わらないこともあります。変わることは、市場区分の名前(だけ?)。変わらないことは、東証マザーズ指数の算出は継続しますので、地合いを見るときは「マザーズ指数を見る」というルーティン。

 細かいルール変更はありますが、マザーズ指数は残ります。東証によれば、2023年10月最終日の段階で名称を変更したいようです(仮称ですが「東証グロース市場250指数」に変更)。この仮称にあるように、ルール変更として、マザーズ指数の構成銘柄を上位250銘柄に絞ることが決まっています。

 全体の4割削減くらいの大胆なリストラ。では、250銘柄だけのマザーズ指数になるのはいつから? ですが、「2023年4月最終営業日」です。

 250銘柄に絞る基準は、「上場時価総額」と決まっています。どの時点か? でいえば、今年8月末です。まだ5カ月程度ありますが、仮にマザーズ指数に残りたい企業の場合、この時点までに時価総額を高めておく必要があります。

 上位250銘柄に入るための目安となる時価総額ですが、4月4日時点の250位はセキュアの時価総額63億円。8月までの株価変動で目安は変化しますが、このサイズのグロース市場銘柄に関しては、新しいマザーズ指数に残留できるか微妙といえます。

 時価総額は「株価×発行済み株数」ですので、株価を高めるか、発行済み株数を増やすか(新株発行で株数を増やすと希薄化で株価が下がるため、これはNG)…株価を高める一択と言えますので、IRを頑張る(リリースを増やす、充実した説明資料を作るなど)、投資家が喜ぶ策を示す(株式分割や株主優待など)といったポジティブな変化に期待したいところ。

 時価総額60億円前後の小型銘柄で、会社側の姿勢に変化を感じた場合、今まで以上に注目できそうです。

 マザーズ指数のルール変更でいえば、東証グロース市場に区分されたジャスダック・グロース銘柄が自動的にマザーズ指数の構成銘柄になることも挙げられます。追加されるタイミングは5月末・6月末の2段階。マザーズ指数連動型のパッシブファンド規模は大きくないのですが、ETF(コード番号2516)の純資産で約180億円あります。

 マザーズ指数に加わることで、理論上は(薄いながら)買いインパクトが発生すると考えられます。流動性の極端に低いジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、ストリームメディア、カルナバイオ、BRUNOなど旧ジャスダック・グロース銘柄にはポジティブ材料といえます。

 さて、4月のグロース株市場。3月後半から始まった強烈リバーサルの名残は、4月も引き継いで始まっています。原油価格の上昇に一服感が出たことで、インフレ加速懸念が緩み、米長期金利の上昇にも一服感が出ています(とはいえ、高水準ですが)。

 そのタイミングで年度が替わったことで、東証プライム市場でもウエートを高めてきた高配当系の大型バリュー株を売却し、ウエートを落としてきた高バリュエーション系の大型グロース株を買うといった動きが起きています。下げがきつかった分の「戻り余地」に、まだ魅力アリ! と感じている投資家は多そうです。

 ただ、これも毎度のことですが、この市場は短期売買前提のプレーヤーばかりで作られています。そのため、値動き悪化で簡単に引き潮になるのがグロース株市場。それでいえば、次の5月FOMC(5月3~4日)接近に向けた地合い変化には日々注意すべき。まだ、このタイミングでの利上げ幅が0.25%なのか、0.5%なのかコンセンサスが固まっていません。

 要人発言にコンセンサスが揺らぎやすいうえ、FOMCが日本の大型連休(GW)に重なるのも心配。また、グロース株にとって決算発表は鬼門ですが、GW明けに決算発表ラッシュ(しかも3月決算企業でいえば本決算)となります。

 手前で警戒感(グロース株の場合は手じまいは「売り」)を高める可能性は高く、今起きているリターンリバーサルを4月いっぱい維持…これはさすがに想像しがたいと言えそうです。