ドル/円は6年7カ月ぶり125円台をつける

 日本は過去30年間、ステファニー・ケルトンが指摘しているように疑似MMT(現代貨幣理論)政策を行ってきた。これは海外で「狂気の最高の展示物」とやゆされているが、必然的に現金(日本円)の崩壊に近づいていく。

 先週、『投機筋は黒田日銀の無策の限界(円安けん制レベル)を試しにくる!』というレポートを書いたが、投機筋はとりあえず125円を試しにきた。

ドル/円(日足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 3月18日の黒田総裁の会見以降は円安が進み、3月24日の片岡日銀委員の「より金融緩和姿勢を強める必要がある」、「円安はプラス」、「輸入価格への影響は全体から見ると非常に小さい」という発言で投機筋の円売りが加速した。

 片岡委員の予告通り、日銀は3月28日に指値オペを実施し、長期金利を0.25%に抑える価格操作を行った。これは無制限に国債を買い入れるという追加の量的緩和策である。世界中がインフレを抑えようと利上げに動いている中で、日銀だけがこのような政策を行えば円安になるのは当たり前のとこだ。

 そうしたなか、ドル/円は130円を超えると、150円まで下落するという見方も出てきた。「円は対ドルで約6年ぶりの安値圏にあり、過小評価されているとの見方が既に多い。しかし、さらに値下がりする余地があり、現行水準から2割近く下落して1990年以来の安値に達する可能性がある」(3月25日ブルームバーグ 『1ドル150円まで円下落も、円安乗る動き』)と、ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズはみているという。

 緩和一辺倒できた黒田日銀は方向転換できないだろう。為替の管轄は日銀でなく財務省だが、米ドルが米国の事情(不景気のドル安転換や株の暴落)で崩れるか、日銀が政策スタンスを変えない限り、単独介入で円安が止まるとは思えない。口先的なけん制が財務省や日銀から出てきて円安進行は一服しているが、2015年6月の円の安値125円85銭が視野に入ってきている。

ドル/円(月足)

出所:石原順

 著名投資家マーク・ファーバーが以下に書いたFRBへの批判は、日銀にもそのまま当てはまるだろう。

「安全だと思われているもの、つまり現金は、もう安全ではない。安全ではないのだ。何が安全かと聞かれても、私には何が安全なのかわからない。無限にお金を印刷するマネープリンターがいる中で、何が安全なのか、私にはもうわからない。彼ら(中央銀行)はやめられないと思う。むしろ、お金の印刷を加速させなければならないと思う。つまり、株は上がっても、実質的には生活水準が上がるわけではないのだ。世界で最も裕福な50人の生活水準は上がるかもしれないが、典型的な米国人の生活水準は上がらない。その生活水準は下がるだろう。インフレは(FRBが宣言するように)「一過性のもの」ではないと思う。スタグフレーションにはならないだろう。もっとひどいことになるだろう。物価が上昇し、ほとんどの人の生活水準が落ち込むことになるだろう」

出所:『「セントラルバンカーたちは犯罪者」 マーク・ファーバーが警告 「COVIDが終わればエリートは戦争を始める」』(ゼロヘッジ)

 吉野家の牛丼の価格は2013年の280円をボトムに、2021年10月29日には426円まで上昇してきた。現金(日本円)の崩壊政策によって円安が進めば、吉野家の牛丼が1,000円になる日が来るのかもしれない。