経済優先のロックダウン?「深センモデル」が常態化する

 上海市でロックダウン措置が取られる前、中国経済をけん引する広東省(同省のGDPは中国トップ、全体の約10%を占める)の深セン市における「ロックダウン」が物議を醸していました。同市は3月14日から交通規制や外出制限の措置を取り、全市民に対して3回のPCR検査を行いました。メディアでは「事実上のロックダウン」と紹介されました。

 その後、PCR検査を終えた同市は、「市内の新型コロナ感染状況は依然として深刻だが、全体的には制御可能」とし、感染者が確認されている地域では感染抑止策を厳しく続けるとしつつも、21日より市全体でのロックダウン体制を解除すると発表。公共の交通機関や企業活動も再開が可能となりました。この“ロックダウン”は実質1週間で終了しています。

 一方の陝西省。年初に新型コロナが猛威を振るっていました。西安市では100人以上の感染者が出て、ロックダウン措置が取られました。当初、私は同市で暮らす知人と連絡を取っていましたが、当時の武漢市をほうふつとさせるような厳格な、正真正銘のロックダウン措置が取られ、「100人以上」の感染者数をゼロにするために、その措置は約1カ月間続きました。市民は疲弊して、仕事や消費への影響も顕著だったと聞きました。

 3月中旬に深セン市が取った措置との違いは明らかです。感染者ゼロを徹底して実現しようとする旧来型のロックダウンから、経済活動への影響を最小限に食い止めようとする「新型ロックダウン」への転換と言えます。上記の上海市も基本的にはこの「深センモデル」を踏襲することでしょう。スピーディーにPCR検査を徹底し、臨機応変、かつ短期的にプチロックダウン措置を取り、改善が見られたら経済優先で大胆に解除する方策が取られると思います。

 封鎖と解除の揺れ幅が大胆となるのは必至であり、現地で仕事や生活をしている関係者は対応に骨を折ると察しますが、それも習氏が発した鶴の一声による「副作用」です。目的は、コロナ抑制と経済成長をこれまでよりもダイナミックに両立、共存させることに他なりません。

 言うまでもなく、景気にまつわる各種統計や指標への影響もこれまで以上に小刻みに、動態的になっていくでしょう。私自身、中国経済の現状と行方を判断する上で、これまで以上に綿密な調査と分析が必要になると痛感している今日この頃です。