経済制裁、反戦デモ、停戦協議…戦争を終わらせるには至っていない

 戦争を終わらせる、プーチンに軍事侵攻を止めさせるという動機から、西側諸国が率先して、かつ相当程度団結して発動したのが経済制裁にほかなりません。欧米や日本の間で一定程度の差異は見られますが、主な制裁には、国際的な決済ネットワークであるSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの特定の銀行を除外、ロシア中央銀行の資産を凍結、ロシアとの貿易を規制、WTO(世界貿易機関)の規定に基づく「最恵国待遇」の撤回、プーチン政権と関係が深い主要人物の資産凍結、などがありました。

 ロシア経済が打撃を受けていないはずはありませんが、戦争を終わらせるには至っていません。また、ロシア国内で反戦デモは行われており、一部関係者がプーチン氏への反対や反発の声を上げているものの、政権側はそれらを力で抑え込んでいます。(1)と(2)が戦争を終わらせるには十分ではないという現実の証しです。

(3)は特筆に値する。ウクライナ軍が予想以上に「善戦」しているというのは多くの専門家が指摘する点です。ロシア軍の軍事作戦としての「未熟さ」に関する議論も聞こえてきます。ただ、そうしている間にも多くの命が失われています。民間人が住む地域が破壊されています。ロシア、ウクライナ両軍が「共倒れ」するまで戦い、結果的に休戦というのは、現実的にあり得ないシナリオではありませんが、歓迎できる、目指すべき結果ではありません。

(4)は私からみても最も理想的かつ現実的な路線です。当事者を中心に、関係諸国も見守り、関与する形で、話し合いを通じて合意が形成され、それぞれが自らの意思で休戦を誓い、そのために動き、平和の再構築に向けて共働するのがベスト・オブ・ザ・ベストであることは論をまたないでしょう。

 実際に、ロシア、ウクライナ間での停戦協議、ロシアと中国、欧州諸国間との首脳、外相会談、中仏独首脳会談、米中首脳会談・ハイレベル協議など、当事者や大国間で不断に話し合いが続いています。トルコやイスラエルのように「仲介」に活路を見いだす国もあります。

 ただ、現状として、(4)が戦争を終わらせるまでには至っていないのは明らかです。