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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
ロシア株・ドイツ株急落 ウクライナ停戦遠のき 世界景気に下ぶれリスク

ウクライナ停戦期待遠のき、世界経済全体にダメージ及ぶ懸念広がる

 先週(2月28日~3月4日)の日経平均株価は1週間で491円下落し、2万5,985円となりました。ウクライナ停戦への期待が遠のき、ロシアがウクライナの原発や民間住宅などへの攻撃を強めたことを受け、株式市場でリスク回避の売りが増え、欧米株と日経平均は再び急落しました。

 欧米、日本など世界各国がロシアへの経済制裁を強めることでロシアへの経済的ダメージが深刻になりつつあります。ロシアを国際間決済から締め出したことで、ロシアは輸出入決済ができなくなり、ロシア通貨ルーブルが急落。さらにEU(欧州連合)がロシア向け貨物に港湾を使用させない制裁を打ち出したことで、ロシアは金融・物流両面から経済にダメージを受けています。

 一方、制裁を加える側にもダメージが大きくなる可能性があります。特に、ロシアとの経済的つながりの深い欧州へのダメージが大きくなります。欧州経済が失速、さらに世界経済全体にダメージが及ぶ懸念が出たことが、再び世界株安が起こる原因となりました。ロシアへの依存が大きいレアメタルの供給が途切れると、世界の工業生産がストップするリスクも懸念されます。

 以下のチャートを見てわかる通り、ドイツDAX指数のウクライナショックによる下落率は、日経平均や米国株価指数よりも大きくなっています。

ナスダック総合、S&P500、NYダウと日経平均の動き比較:2019年末~2022年3月4日

出所:2019年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 昨年10月以降の世界株安は、さまざまな要因が重なった複合ショックですが、中でも影響が大きかったのが、【1】米インフレショックと、【2】ウクライナショックだと考えています。

 米インフレショックは、大型ハイテク株比率の高い、米ナスダック総合指数に一番大きな影響を与えました。ウクライナショックは、欧州への影響が大きく、ドイツDAX指数の下げが大きくなっています。

 2021年10月までの回復は、米ナスダック、米S&P500が大きく、日経平均、DAXはともに出遅れていました。日本・ドイツの共通点は、自動車・機械などの製造業が強く、中国経済の影響を大きく受けることです。中国の不動産バブル崩壊、景気減速懸念が影響して、日本およびドイツ株の回復は遅れていました。そこに、ウクライナショックが加わって、DAXはコロナ前、2019年末の水準を下回るところまで下げました。