今回の戦争はいつ「勃発」するのか?

 ここからは仮の話です。

 冒頭のとおり、ショルツ独首相は今回の混乱を「戦争」と呼んでいます。では、今回の戦争はいつ「勃発」する(片方がもう片方を本格的に攻撃する)のでしょうか。NATO軍などによるロシアへの攻撃がいつ行われるのか? という問いです。

 交戦による損害をある程度容認する覚悟があったとしても、それらを最小限にする努力をするはずです。つまり、NATO軍はロシア軍を攻撃するとしても、軍事的な行為を最小限にとどめるはずです。

 そのためには、事前の活動が不可欠です。ロシアが軍事的な活動を拡大できないように「外堀を十分に埋める」こと、関係各国が具体的な展望を持てるように「戦後の体制の大枠を調整する」こと、そして、一般大衆の多くが納得する「十分すぎるくらいの攻撃をする動機を蓄える」ことなどです。

図:NATO軍がロシア軍を攻撃するための事前準備(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 こうした事前の活動を経ないまま、NATO軍がロシア軍を攻撃することはないと、筆者は考えます。

 冒頭で述べたとおり、足元、西側諸国は、国際送金の情報をやり取りする機関「SWIFT(国際銀行間通信協会)」からロシアの一部の銀行を排除するなど、制裁を強化している最中にあります。一方、プーチン大統領は、核抑止部隊に高度な警戒態勢に移行するよう指示し、緊張を強める姿勢を崩していません。

 こうした例からも、NATO軍がロシア軍を攻撃するための事前の活動が、まだ十分ではないことがうかがえます。

 であるのであれば、攻撃はすぐには行われない、ことになります。こうした活動は水面下で時間をかけて行われることが通例であるためです。

 このように考えれば、戦争が「勃発しない状態」はまだ続く、すなわち「勃発」がきっかけで金や原油の価格が変動するのはまだ先、と言えるでしょう。

 この数カ月間、ウクライナ情勢が悪化してきた過程において、金(ゴールド)も原油も、価格が大きく上昇してきました。先述のとおり、勃発発生は「前後のタイミングで数カ月程度の山を作る材料(「予兆」での上昇を含む)」と言えるため、今後、数カ月以内くらいに、大きなターニングポイントを迎える(勃発が起きる)かもしれません。