今週のイベントと市場動向を考察

 次に、少し視点を変えて、今週のイベントについて注目すると、国内は週末11日(金)のメジャーSQ(特別清算指数)を控えて、需給的な思惑が働きやすい相場地合いとなる中、米国では、ここ数カ月間の株式市場にとって「鬼門」だった、米CPI2月(消費者物価指数)の発表が予定されています。

 ただし、米議会で先週開催されたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言で、来週(15~16日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅が0.25%になりそうなことと、そして、今後の金融政策運営が流動的なウクライナ情勢と景気動向を見ながらになることが示され、米金融政策に対する注目度はいったん後退すると思われるため、今週も株式市場はウクライナ情勢に振り回される展開が中心になりそうです。

 先週は停戦協議や緊張緩和期待で株価が反発した場面があり、今週も同様の展開が訪れることも考えられます。ただし、一時停戦などの「とりあえず」的な状況改善は好材料として長続きしにくい可能性があります。

 確かに、一時停戦によって人命が奪われることが回避されること自体は望ましいのですが、同時に「武力侵攻による主権独立国家への干渉を認めた」事例を残すことも意味します。

 味をしめたロシアが次の行動に出る懸念が燻(くすぶ)るほか、アジアなど他地域へ同様の火種が拡散されることにつながりかねず、戦術的な安全保障の判断や経済利害関係だけで安易に妥協することは中長期的に多くの問題を残すことになります。

 また、警戒感が燻り続ける以上、経済制裁もすぐに解除されるとは限らず、金融市場が事態の長期化と経済制裁の影響によるスタグフレーションを織り込む動きとなれば、株価はさらに下がることも想定されます。

 今回のウクライナをめぐる出来事は、これまでNATO(北大西洋条約機構)に非加盟だった国が加盟を検討し始めたり、日本国内でも安全保障の在り方を根本から見直すべきという議論が浮上しているように、すでに「一地域の地政学問題」ではなくなっています。

 そのため、世界が大きな転換期を迎えているかもしれないことを念頭に置いて取引する必要があり、短期的な株価反発ねらいならばプラスがあるかもしれませんが、中長期的なスタンスなのであれば、今が「買い場」とは言い切れない面があり、打診買いや様子見などで相場に臨むのが良いかもしれません。