先週の日経平均は節目の2万6,000円台を下回って終了

 先週末3月4日(金)の日経平均株価は2万5,985円で取引を終えました。節目の2万6,000円台を微妙に下回ってしまったほか、前週末終値(2万6,476円)からの下げ幅は491円、週足ベースでも3週連続の下落となりました。

 先週も引き続き、混迷するウクライナ情勢への警戒感が、相場のムードを覆う状況の中での相場展開となりましたが、前回のレポートでも指摘したように、「リスクオフではあるものの、パニック的に売りが重なる」状況ではなかったといえます。

 またテクニカル的には、売られすぎ感や株価底入れの兆(きざ)しも一部でみられるようになってきています。このまま行けば、いわゆる「有事は買い」という相場格言どおりの展開も想定される一方、「ホントに大丈夫なの?」という心理面でのモヤモヤ感との間で、判断に迷ってしまう局面でもあります。

 そこで、はたして今が株の買い場なのかについて、いつものように足元の状況から確認しつつ、現状の整理と今後のポイントなどについて考えていきたいと思います。

■(図1)日経平均(日足)とMACDの動き(2022年3月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ってみると、週の前半にあたる2月28日(月)と3月1日(火)についての株価は戻りをうかがう展開となっていました。

 とりわけ、1日(火)については、リスクオフの境界線として意識されている2万7,000円台に乗せる場面があったり、25日移動平均線超えをトライするような動きがあったりしたのですが、週末にかけて失速してしまい、結果としてレジスタンス(抵抗)になってしまった格好です。

 上の図1のチャートを見ても分かるとおり、2022年に入ってから25日移動平均線はレジスタンスとして機能しています。反対に、2万6,000円台割れのところでは買いが入り、下値の目安として意識されているようです。

 つまり、今年に入ってからの日経平均は、上値が25日移動平均線に抑えられ、右肩下がりになっている一方、下値は2万6,000円水準でそろっており、「三角保ち合い」に近い形状を作っているようにもみえます。

 三角保ち合いは、保ち合いを抜けた方向に勢いが出やすいとされているため、株価が25日移動平均線を明確に上抜けると、思ったよりも強い上昇をみせる可能性がありますが、同時に今週の日経平均が2万5,000円台での推移が中心となってしまえば一段安も想定されることになります。

 図1下段のMACDもまだ、MACDがシグナルを上抜けておらず、実際はチャートの見た目の印象よりも不安定な状況かもしれません。

 さらに、先週末の日経225先物取引の終値が大取で2万5,870円、シカゴCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万5,780円と、先週末の日経平均終値(2万5,985円)よりも安くなっていることもあり、週明け7日(月)の日経平均が値を戻せるかを見極めることがポイントになってきます。

 また、株価の戻りを仕掛けるタイミングについては、5日と25日移動平均線の関係に注目するのも良いかもしれません。

■(図2)日経平均(日足)の動き(2022年3月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2を見ても分かるように、チャートを過去にさかのぼると、5日移動平均線が25日移動平均線を上抜けたところ、要は「ゴールデン・クロス」後に株価が上値を伸ばす場面が多いことが分かります。

 そして、その次に控える75日移動平均線も上抜けることができれば、さらにその勢いが増すことも考えられます。

 実際に、昨年8月から9月にかけての上昇がそのパターンに当てはまりますが、昨年12月から今年1月にかけての場面のように、75日移動平均線を抜けきれずに再び下落に転じたパターンもありますので、株価が反発した場合、少なくとも75日移動平均線あたりまでの戻りを想定するのが無難かもしれません。

 シンプルすぎる見方ではありますが、不透明感が強い相場地合いだからこそ、単純な方法がかえって功を奏すると思われます。図2のチャート期間には反映されていませんが、2020年のコロナ・ショック時も、5日と25日移動平均線のゴールデン・クロス達成後に、株価が順調な戻り基調を描いていきました。

直近の日経平均の値動き幅を考察

 続いて、目先の日経平均の値動きの幅についても考えてみたいと思います。

■(図3)日経平均75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンド(2022年3月4日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図3は、以前のレポートでも何度か紹介したことのある、日経平均と75日移動平均線との乖離率の推移をボリンジャーバンド化したものです。

 先週末(3月4日)時点の75日移動平均線の値は2万8,028円でした。同日の日経平均終値が2万5,985円でしたので、乖離率はマイナス7.86%ということになります。

 図3のピンク色の線がその乖離率の推移を表しているのですが、足元は、ボリンジャーバンド全体の傾きが右肩下がりとなる中で、マイナス1σ(シグマ)とマイナス2σのあいだを往来しながら下落トレンドとなっていることが分かります。図3を過去にさかのぼると、2021年の2月から6月にかけて似たような形で下落トレンドとなっていました。

 そのため、株価が下落するのであればボリンジャーバンドのマイナス2σあたり、上昇していくのであれば、マイナス1σや中心線(MA)あたりが目安として意識されることが考えられ、先週末時点の75日移動平均線の値で計算すると、2万5,500~2万7,250円が想定レンジとなります。

 また、図3全体で乖離率の動きを眺めてみると、2022年になって、これまでサポートして機能していたマイナス5%を下抜け、足元ではサポートからレジスタンスとなっているようにもみえます。

 1月27日にはマイナス10%に迫るマイナス9.60%をつける場面もあったため、これらも考慮する必要がありそうです。先週末時点のマイナス5%は2万6,626円、マイナス10%は2万5,225円です。

 もちろん、日々の株価の動きでこれらの値は変化していきますが、大体の目安として参考になると思います。

今週のイベントと市場動向を考察

 次に、少し視点を変えて、今週のイベントについて注目すると、国内は週末11日(金)のメジャーSQ(特別清算指数)を控えて、需給的な思惑が働きやすい相場地合いとなる中、米国では、ここ数カ月間の株式市場にとって「鬼門」だった、米CPI2月(消費者物価指数)の発表が予定されています。

 ただし、米議会で先週開催されたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言で、来週(15~16日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅が0.25%になりそうなことと、そして、今後の金融政策運営が流動的なウクライナ情勢と景気動向を見ながらになることが示され、米金融政策に対する注目度はいったん後退すると思われるため、今週も株式市場はウクライナ情勢に振り回される展開が中心になりそうです。

 先週は停戦協議や緊張緩和期待で株価が反発した場面があり、今週も同様の展開が訪れることも考えられます。ただし、一時停戦などの「とりあえず」的な状況改善は好材料として長続きしにくい可能性があります。

 確かに、一時停戦によって人命が奪われることが回避されること自体は望ましいのですが、同時に「武力侵攻による主権独立国家への干渉を認めた」事例を残すことも意味します。

 味をしめたロシアが次の行動に出る懸念が燻(くすぶ)るほか、アジアなど他地域へ同様の火種が拡散されることにつながりかねず、戦術的な安全保障の判断や経済利害関係だけで安易に妥協することは中長期的に多くの問題を残すことになります。

 また、警戒感が燻り続ける以上、経済制裁もすぐに解除されるとは限らず、金融市場が事態の長期化と経済制裁の影響によるスタグフレーションを織り込む動きとなれば、株価はさらに下がることも想定されます。

 今回のウクライナをめぐる出来事は、これまでNATO(北大西洋条約機構)に非加盟だった国が加盟を検討し始めたり、日本国内でも安全保障の在り方を根本から見直すべきという議論が浮上しているように、すでに「一地域の地政学問題」ではなくなっています。

 そのため、世界が大きな転換期を迎えているかもしれないことを念頭に置いて取引する必要があり、短期的な株価反発ねらいならばプラスがあるかもしれませんが、中長期的なスタンスなのであれば、今が「買い場」とは言い切れない面があり、打診買いや様子見などで相場に臨むのが良いかもしれません。