リスクとインフレがダブルで金価格を押し上げ

 足元の金(ゴールド)市場を取り巻く環境をまとめると、以下のようになります。筆者が考える7つのテーマでまとめています。先述の通り、「ウクライナ危機」は有事のムードを強め、資金の逃避先需要を増やし、金(ゴールド)相場を押し上げていると、考えられます。

 また、「ウクライナ危機」が増幅している「インフレ懸念」は2つの意味で、金(ゴールド)相場の上昇要因と言えます。「インフレ懸念」がニュースの見出しになった時、それを不安に感じる投資家は少なくありません。このため「インフレ懸念」もまた、資金の逃避先需要を増幅する一因といえます。

 同時に、インフレ(物価高)は、相対的な通貨安であるため、その通貨安が、どの国の信用を必要とせずに存在できる通貨という側面を持つ、金(ゴールド)を保有する妙味を増加させることがあります。

図:金(ゴールド)市場における7つのテーマ

出所:筆者作成

 足元、米国では急速に金融引締め的な措置(利上げ、量的引き締め)についての議論が進んでおり、「代替通貨」のテーマにおいては、金(ゴールド)相場への下落圧力がかかっているとみられます。

 しかし、金(ゴールド)価格は上昇しています。米国の金融政策起因の下落圧力を相殺して余りある、上昇圧力が存在するためです。その上昇圧力は「ウクライナ危機」による「リスク拡大」と、同危機が増幅している「インフレ懸念」によって生じていると考えられます。

 今後の金(ゴールド)相場の動向に注目です。毎週火曜日の通常のレポートで随時、価格動向の見通しについても、触れていきます。