今回は臨時で、象徴的な値動きを演じている金(ゴールド)相場の動向を解説します。通常の毎週火曜日掲載のレポートでも、随時、金相場の動向について触れていきます。

金(ゴールド)価格は1,900ドルに到達

 2月17日(木)、NY金(ゴールド)先物価格が、昨年6月以来となる1,900ドルに達しました。この8カ月間、金市場はさまざまな材料に揺られながら推移してきましたが、ここに来て、上昇に勢いが付いてきました。

図:NY金先物価格の推移(期近 日足) 単位:ドル/トロイオンス

出所:マーケットスピードⅡの情報をもとに筆者作成

「ウクライナ危機関連銘柄」上昇目立つ

 以下のとおり、この1週間(2月10日から17日)の主要銘柄の騰落率を確認すると、「ウクライナ危機関連銘柄」の上昇が目立っていることがわかります。

図:主要銘柄の騰落率(2022年2月10日と17日の終値で計算)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

「ウクライナ危機」をきっかけに、天然ガスと原油は、ロシア産の欧州向け供給が減少する懸念が、プラチナは主要鉱山生産国であるロシアからの、小麦とトウモロコシは主要生産国であるウクライナとロシアからの供給が減少する懸念が意識されています。

 供給減少懸念は、価格上昇要因です。エネルギーと食糧価格を押し上げる一因となっている「ウクライナ危機」は、昨年半ばから目立ち始めた「インフレ懸念」を増幅しています。

 また、「ウクライナ危機」は、「資金の逃避先」需要を増やす要因になっています。資金の逃避先需要とは、何か危機が起きている時(有事)、自分が持っている資金をできるだけリスクが小さい(と思われる)対象に振り向ける需要のことです。

 まさに今、危機をきっかけに資金の逃避先需要が増えており、その資金の振り向け先として、歴史的にみてもその対象と目されやすい金(ゴールド)が、物色されていると考えられます。銀が上昇しているのは金に追随する傾向があるためです。

 この間、投機色が強いビットコインが急落していることは、市場全体のムードが、さまざまな市場を縦横無尽に資金が行き交う「リスク・オン」のムードの逆である「リスク・オフ」の状態であることを示唆しています。

 市場全体が「リスク・オフ」の時、資金の逃避先需要が増し、金(ゴールド)相場が上昇する、というある意味、理屈どおりの価格動向が見られているわけです。

リスクとインフレがダブルで金価格を押し上げ

 足元の金(ゴールド)市場を取り巻く環境をまとめると、以下のようになります。筆者が考える7つのテーマでまとめています。先述の通り、「ウクライナ危機」は有事のムードを強め、資金の逃避先需要を増やし、金(ゴールド)相場を押し上げていると、考えられます。

 また、「ウクライナ危機」が増幅している「インフレ懸念」は2つの意味で、金(ゴールド)相場の上昇要因と言えます。「インフレ懸念」がニュースの見出しになった時、それを不安に感じる投資家は少なくありません。このため「インフレ懸念」もまた、資金の逃避先需要を増幅する一因といえます。

 同時に、インフレ(物価高)は、相対的な通貨安であるため、その通貨安が、どの国の信用を必要とせずに存在できる通貨という側面を持つ、金(ゴールド)を保有する妙味を増加させることがあります。

図:金(ゴールド)市場における7つのテーマ

出所:筆者作成

 足元、米国では急速に金融引締め的な措置(利上げ、量的引き締め)についての議論が進んでおり、「代替通貨」のテーマにおいては、金(ゴールド)相場への下落圧力がかかっているとみられます。

 しかし、金(ゴールド)価格は上昇しています。米国の金融政策起因の下落圧力を相殺して余りある、上昇圧力が存在するためです。その上昇圧力は「ウクライナ危機」による「リスク拡大」と、同危機が増幅している「インフレ懸念」によって生じていると考えられます。

 今後の金(ゴールド)相場の動向に注目です。毎週火曜日の通常のレポートで随時、価格動向の見通しについても、触れていきます。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)