天然ガス市況高騰

 世界的に、原油・天然ガス・石炭など、化石燃料の価格が高騰しています。皮肉なことに、世界各国が脱炭素(化石燃料からの離脱)を進める方針を示したことが、これらの価格高騰を招いています。

 世界景気回復で需要が拡大する中で、化石燃料の開発や増産が進みにくくなったことが、供給不足・価格高騰を招いています。

 天然ガス市況は、以下の通り、推移しています。投機筋の買いで昨年10月に急騰した水準からは下がっていますが、依然として高水準に張り付いています。

ニューヨーク天然ガス先物(期近)推移:2019年末~2022年2月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 世界各国が脱炭素を進める中で、化石燃料である天然ガスの需要が急速に拡大、市況が高騰していることが戸惑いを生じています。

 ただ、こうなることは当然の帰結だったと言えます。脱炭素を進める上で、まっさきに削減が求められているのは石炭です。石炭火力発電を縮小する代わりに、石炭よりCO2排出が少ないガス火力へシフトが急速に進むのは自明です。

 特に、世界の石炭消費の約半分を占める中国が、天然ガス・LNGの調達を拡大していることが、ガス市況の高騰につながっています。再生可能エネルギーの拡大には相当長い年月がかかりますから、まず天然ガスが代替エネルギーの中心となることが、はっきりしてきました。

 脱石炭は、中国もはっきり意識しています。石炭火力が深刻な大気汚染を引き起こしているからです。国際社会の要求に応えるだけでなく、自国の環境問題を解決するためにも、中国は脱石炭を進める方針です。