「株の持ち方・売買」と投資スタイル

 そもそも株式に投資する金額をどうするか。増やすべきなのか、減らすべきなのか。個人投資家としては、この選択が重要だと考える投資家が少なくないだろう。マーケット・タイミングに賭ける投資家は少なくない。この軸と、ポートフォリオのスタイルとを合わせて描いてみたのが、図3だ。

(図3)スタイルと投資の(売買の)形態

 縦軸の上下の位置を表す数的尺度を一つ考えると「売買回転率」かも知れないが、「長期一括投資」と「積立投資」の差は「回転率」とは少々異なる。

 積立投資は「その時々に最適な投資額が増えたと考えて追加投資する長期投資だ」と考えることができるが、期間が長くなるほど投資額を増やす一種のマーケット・タイミングへの賭けの側面がある。

 図の中では「材料投資」と表現したが、市場で関心を集める「テーマ」や個々の企業のニュースなどに反応して投資するタイプの投資家は、グロース寄りの銘柄を手掛けることが多いだろう。

 一方、バイ・アンド・ホールドを決め込んで長期投資する投資家の場合、割安株の長期保有が多いのではないだろうか。

 縦軸上の上にある点が表しているのは、株価指数先物などを短期売買する投資家で、主な分析手段はテクニカル分析だろう。指数への投資なので、バリュー・グロースの偏りはないが、売買回転率は高くなる。筆者の過去の文章を読んでいる読者からは「あなた(=筆者)は、短期売買を投資とは認めていないのではなかったか。また、テクニカル分析は役に立たないと言っていたのではないか」という疑問(或いは批判)の声が出るかも知れない。

 そうした声に対しては、「はい、その通りです」と答えて(喜んで)頭を下げるが、トレーディングを好む個人は少なくないので、今回は、個人投資家の仲間に入れて分類してみることにした。

 一方に、テクニカル・トレーダー、他方に長期一括投資家がプロットされる軸の真ん中付近の割合広い範囲に、マクロ経済などの情報に影響されて、株式の保有額を調整したり、バリュー重視かグロース重視かを変更したりする、よく言うと柔軟な投資家が存在する。

 マクロ経済の分析を背景にアセット・アロケーションを変更するような投資手法はいくつかの点で上手く行きにくいのだが(詳しくは別の機会に論じたい)、直感的には納得的だし、多くの投資家が経済ニュースの影響を受けて動く。

 一方、「株主優待狙いの投資家」、「配当目当ての投資家」、「自社株をじっと持っている投資家」などは、スタイル上の位置づけが難しいし、必ずしも投資収益を優先する判断を行って投資している投資家ではないので、今回の分類には含めていない。

 もっとも、それぞれの投資家は、自分で考えて、自分のお金で投資しているのであって、それ自体に問題があると言いたい訳ではない。

 株式投資は素晴らしい趣味であり、上手くやると合理的な資産形成の手段にもなる。また、幸いにして、なにがしか株式を持ち続けている投資家全体にとって「プラス・サム」になり得るゲームだ。

 全ての投資家のポートフォリオに好いリターンが訪れることを祈る。