皆さま、新年明けましておめでとうございます。今年は中国の現在地と先行きを占う上で極めて肝心な年になります。毎週のレポートを一筆入魂の精神で書きつつ、連載を通して読めば、2022年の中国を一つのまとまりとして理解できるように作り上げていきたいと考えています。どうかお付き合いください。

2022年は中国にとって肝心な年

 新年一本目となる今回は、中国にとって肝心な年となる2022年に、日本の投資家が注目すべき中国の8大イベントを考えてみたいと思います。「8」は中国では縁起が良い数字です。皆さまの投資活動が、中国経済から利益を得られ、かつリスクを回避できますように、という願いを込めました。

 ここでいう「イベント」はいわゆる催し物だけではなく、「事件」にまつわる関係性や問題点なども含めることにします。中国がくしゃみをすれば世界全体が風邪をひく、などといわれて久しいですが、決して大げさではありません。

 中国共産党が打ち出す政策の一つ一つ、中国の経済成長率の上げ下げ、そして「政治の国」である中国の政治動向、対外政策を含め、米国や日本をはじめとした世界各国の市場動向に影響が及ぶことは避けられません。

 仮に中国株に投資していなくても、「自分は日本株にしか投資しないから、中国は関係ない」という姿勢ではいられないということです。例として、米国の利上げ同様、中国の利下げも、日本の株式市場に直接的な影響が及ぶのは必至です。

 前置きが長くなりました。以下、8大イベントを一つ一つ挙げていきます。順番も適当に並べているわけではありません。時間軸や関連性などを意識して配置しました。ぜひ頭の中で整理しながら読み進めていただければ幸いです。

注目の中国8大イベント

イベント1:北京冬季五輪

 北京冬季五輪(2月4日開幕)まで残り1カ月となりました。夏季、冬季を問わず五輪とは本来「平和の祭典」であるべきですが、政治と無関係ではいられないのもまた歴史的真実です。1980年のモスクワ五輪では、米国が旧ソ連のアフガニスタン侵攻を非難し、選手団を派遣しないよう同盟国に要請したことで、日本を含む50ほどの国が参加しませんでした。準備をしてきた選手たちは、悔しい思いをしました。

 今回の北京五輪も例外ではありません。新疆(しんきょう)ウイグル自治区における人権侵害を問題視する国の中では、米国、英国、カナダ、豪州などが「外交ボイコット」を決めました。日本も閣僚らを派遣しないと表明しています。開幕式までの1カ月間で、中国共産党による人権侵害を引き金に、北京五輪へのボイコットや拒絶反応がさまざまな形で広がっていけば、当然外交問題に発展します。そして言うまでもなく、そのような姿勢を表明した国の企業は対中ビジネスがやりにくくなる、あるいは、中国当局からの制裁に遭いやすくなるのも必至です。

 北京五輪はすでに政治問題化、外交問題化しています。北京五輪のスポンサー事業や、その先にある対中市場戦略を含めた、中国と諸外国間における経済活動にも影響を与えるということです。私がリスク要因として注視すべきと指摘するゆえんです。

イベント2:新型コロナウイルス

 欧米で三度爆発的に感染者が増え、日本でも変異株オミクロン型の動向、市中感染の広がりを含め、「第6波」の到来が懸念されている今現在、中国でも新型コロナウイルスの感染拡大が再度警戒されるようになっています。

 五輪の開催地である北京およびその近郊からは約1,000キロ離れていますが、年末年始に陝西(せんせい)省、特に西安市(昔の長安)で集中的に感染が拡大し、同市はロックダウン(都市封鎖)に踏み切りました。市内に暮らす友人によれば、学校や職場は全て休止し、自宅から一歩も出ることが許されないとのこと。「まさに当時の武漢と全く一緒の状態」(同友人)。政府から一部食料が無料で配給されているようですが、市民はストレスのかかる生活を余儀なくされているようです。

 ただでさえ感染が拡大しやすい冬の季節、北京五輪に向けて、残りの1カ月に他地域への感染が拡大することはあり得ます。あるいは、昨年の東京夏季五輪と同じように選手らと外部との接触を断つ「バブル方式」を採用したとしても、外国から入国した選手やスタッフからウイルスが拡散する可能性は否定できません。日本でも懸念されていたように、仮に五輪を開催したことで国内での感染が拡大すれば、(日本と中国では政治体制が異なるとはいえ)政権の正統性、求心力にもヒビが入りかねません。

 そして言うまでもなく、新型コロナの感染拡大は経済活動に深刻な影響をもたらします。2022年は政治の季節。習近平(シー・ジンピン)総書記としては、感染拡大→経済低迷→政治不安、という悪循環を何としても避けたいと考えているでしょう。