米・ロ・サウジの供給制約は価格上昇をサポート

 2022年の石油の需給動向に関わるデータを確認します。以下は、世界の石油消費量です。新型コロナがパンデミック化した2020年春に、世界中でロックダウンが発生したことなどを受け、急減しました。

 しかし、その後は順調に回復しています。EIA(米エネルギー情報局)は、2022年の年末に、パンデミック化前の水準を上回るとの見通しを示しています。つまり、今のところ、世界全体の石油の需要は、増加し続けると考えられているわけです。

図:世界の石油消費量 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者作成

「脱炭素」が世界的なブームとなっていても、石油の需要が増加している(今後も増加するとみられている)のは、先述のとおり、「脱炭素」が黎明期・過渡期にあるからだと、考えられます。将来的に安定期に入れば、石油の消費は減少する方向に向かうと考えられます(少なくともそのタイミングは2022年ではない、と考えられます)。

 消費が増加するのであれば、価格動向を左右する主な要因になり得るのは、生産側と言えそうです。2021年11月時点で、世界の原油生産量の1位は米国(14.4%)、2位はロシア(13.5%)、3位はサウジアラビア(13.4%)です(カッコ内は生産シェア。ブルームバーグのデータより)。

 主要3カ国で世界の40%超を生産しているわけですが、米国と、OPECプラス※に属しているサウジとロシアとでは事情が異なるものの、どちらも、供給に制約がかかる要因を抱えています。※OPEC(石油輸出国機構)加盟国13カ国と、ロシアなど非加盟国10カ国、合計23カ国で構成。2021年11月時点。

 米国では、現政権が「脱炭素」を主導的に進めるべきだと自覚していたり、モノ言う株主が石油会社(メジャー・中小問わず)に対して環境配慮を要求したりしているため、石油開発(特に新規案件)が鈍化しています。こうした点は、世界No1産油国の足かせと言えます。

図:米シェール主要地区および米国全体の原油生産量 単位:万バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者作成

 サウジとロシアが属するOPECプラスの原油生産動向は、以下のとおり、米国や日本などが要求しても応じないほど、かたくなに、過剰な増産をしない姿勢を維持しています。過剰な増産は原油価格を下落させる要因になり得るため、OPECプラスは計画的に少しずつ、増産を実施しています。

図:OPECプラスの原油生産量と生産上限のイメージ 単位:万バレル/日量

出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料より筆者作成

 世界の石油消費量は2022年末まで、増加し続ける可能性がある一方、米国も、サウジとロシアが属するOPECプラスも、供給に制約がかかる要因を抱えています。

 これらの要因は、石油開発鈍化(米国)、産油国の態度硬化(OPECプラス)という点で、「脱炭素」起因であるため、「脱炭素」が2022年も継続する以上、これらの国における供給制約も継続すると、考えられます。

 2022年は2021年と同様、新型コロナの変異株や、米国の金融政策、中国の政治・経済などの動向が、絶えず、株価を不安定化させる可能性があるものの、黎明期・過渡期の「脱炭素」起因の上昇圧力が、不安材料起因の下落圧力を多くの時間帯で相殺し、原油相場を年平均ベースで、堅調推移させる可能性があると、筆者は考えています。

 2022年も、原油相場の動向から、目が離せません。

[参考]原油関連の具体的な投資商品

国内ETF/ETN

WTI原油上場投資信託 (東証)1690
NF原油インデックス連動型上場(東証)1699
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ブル2038
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ベア2039

投資信託

UBS原油先物ファンド

外国株

エクソンモービルXOM
シェブロンCVX
トタルTOT
コノコフィリップスCOP
BPBP