米インフレに歯止めかからず、それでもS&P500は最高値

 12月10日に発表された11月の米インフレ率(CPI総合指数前年比上昇率)は6.8%で、10月の6.2%からさらに0.6ポイントも高くなりました。39年ぶりの高いインフレ率となりました。

米インフレ率(CPI総合指数・コア指数の前年比%)推移:2020年1月-2021年11月

出所:米労働省より作成

 これで、米国の金融政策を決める12月15~16日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、テーパリング(金融緩和縮小)のピッチを速めることが決定される可能性が高まりました。

 11月に始めたばかりのテーパリングは、現時点で来年6月までに完了する予定となっています。緩和縮小のピッチを速め、来年3月までに完了することが検討される見込みです。そうすることで、より早い時期に利上げを始められるようにする可能性が高まりました。

 12月10日は11月のインフレ率6.8%が発表されたにもかかわらず、米長期金利は低下、米国株は上昇し、S&P500は史上最高値をつけました。パウエルFRB議長は「インフレは一時的」をいう見方を撤回しましたが、それでも市場コンセンサスでは「インフレは一時的」と見られているからです。

 米インフレを引き起こしている要因に主に2つありますが、それぞれ一時的と見られています。

【1】資源価格高騰

 原油先物は足元大きく反落しており、先行き、資源高の影響は落ち着いてくると見られています。

【2】コロナ禍の影響による物流の停滞

 港湾作業・陸上輸送の停滞で、輸入貨物が米国内に届くのが遅れ、品不足からインフレが起こっています。予想以上に物流停滞が長引いていますが、それでもいずれ物流が正常化すればまた物があふれて物価は下がると見られています。

 インフレは一時的と見られていることから、米長期(10年)金利は以下の通り、落ち着いた動きとなっています。

米長期金利の動き:2020年1月2日~2021年12月10日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2018年には米長期金利が一時3%を超えたところで、米国株は大きく下がりました。2008年には米長期金利が5%台に入ったところで、米国株は調整に入りました。

 現在、まだ約1.5%です。長期金利がこれだけ低い水準で、米国株が本格的な調整に入ると考えるのは早すぎるとの見方もあります。実際、そうした考え方を背景に、S&P500種指数は最高値をつけたと言えます。