恒大集団には“虎の子”がある

 恒大集団がデフォルトするとして、今回も数年の時間をかけて、恒大ショックは軟着陸すると私は見ています。実際に、デフォルト危機にある現在でも、同社は国内の住宅工事など事業を継続していますし、外貨建ての債権者と債務の見直しを協議するとも表明しています。

 引き続き、同社の許会長は自社の各種資産の売却を進めるでしょう。その過程で、広州市に建設中のサッカースタジアム(総工費約2,000億円)を実質公的管理下に置く、事業拡大の一環で保有するサッカークラブ「広州FC」を売却する可能性も十分にあります。リスク管理委員会が協議、決定していくでしょう。

 恒大集団のこれからを考える上で私が注目しているのが、多くの子会社を抱える同社が、今後どう債務再編、企業再建し、企業や事業をスリム化する中で、どの分野を「本業」にするかです。不動産市場への依存度は減らしていくのが必至です。

 そう考えると、注目は同社がすでに手を出しているEV(電気自動車)です。

 11月19日、同社のEV部門、中国恒大新能源汽車集団(チャイナ・エバーグランデ・ニュー・エナジー・ビークル・グループ:00708/香港)が、新エネルギー車の生産に必要な資金を調達するため、約400億円の増資を行うと発表しました。

 中央政府が2025年までに全体の2割到達を目指すEVに注力し、「本業」に育てていくつもりで、許会長は未来を見据えていると推察します。

 中国においては、中国共産党・中央政府指導部が、国策という観点から重視する分野に乗っかるのが、経済的に収益を上げる、政治的に身を守るという観点からも重要であり、恒大集団が真の意味での再生を遂げるには、本業をシフトチェンジすることが一つの解になるのではないかと見ています。

 恒大ショックがどう軟着陸するか。いつどこに着陸するか。少なくとも数年というスパンで忍耐強く見ていく必要があります。現時点で拙速に結論を下すのは軽率だと考えます。