リスクを正しく受け入られるか?

「先生、それはそうでしょうが、やはり、失敗を恐れるのも、損するのは嫌というのも、人の自然な感情じゃないでしょうか。僕も、安定した暮らしがしたいし、投資でなけなしの貯金がなくなったらどうしようと心配です」

「むろん、起業にも、投資にも、財産を失う可能性があるわけですから、儲けたいからといって、むやみやたらにリスクをとってはいけません。ですから、預貯金しかしない人よりも、投資におカネを回す人は、勉強しなくてはいけないし、メンタルも鍛えなければなりません。運だけでは、長続きしませんから。そのかわり、こと日本のいまの預貯金では、金利は一定でほとんどゼロに近いですよね。一方、自分がリスクを取る投資で上手くいけば大きなリターンが得られます。投資の話をしているようですが、ポイントは、資本主義では、リスクのとり方を知識とメンタルの両面で身に付け、リスクに向き合わないと十分なリターンが得られない、ということです」

「リスクを嫌っているだけでは、おカネは増えない。でも、むやみにリスクをとってはいけない。だから勉強が必要なわけですね。先生、もっと投資のことを知りたくなってきました」

 先生は、目を閉じてうなずきながら、続けた。

「結構ですね。資本主義は、リスクに挑んでおカネを稼ぐことで豊かになれる社会です。のどかな農村で暮らすのも生き方ですが、それも簡単ではありません。私たちも、リスクに向き合うことは特別なことではなく、ごく普通の日常生活だと考えられるように訓練することです」

 隆一は、リーマンショックで痛い目にあったトラウマから資本主義の負の側面ばかりを追ってきた自分を少し後悔したが、それ以上にプラスの側面に対して、自分が思いのほか共感できたことにむずむずと心地よかった。
 これが長期投資に対する考え方の軸になるのかもしれない、という明るい予感を思いながら家路についた。

第10話:「長期で見れば株価が上がる。本当か?」を読む

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