支援を受けやすい「豊かさ」分野で注目の5銘柄。日本企業にも恩恵期待

 繰り返しますが、「共同富裕」が目標とするのは国内経済の底上げです。

 そう考えると、直接最も恩恵を受けるのは、低所得者層、中間層に属する家庭や人々が豊かになる分野。つまり、物質的豊かさ(日常的に使う生活必需品)、そして精神的豊かさ(エンターテインメントなど)に関連するサービスを提供する企業だと思います。

 もちろんこれらだけではありませんが、総合的に判断して、私が注目に値すると考える銘柄は以下です。

  銘柄 コード/市場 業種
1 小米集団 (シャオミ) 01810/香港 スマホメーカー
2 李寧 (リネイ) 02331/香港 スポーツ用品
メーカー
3 珠海格力電器(グリー・エレクトリック) 000651/深セン 家電
4 携程集団(トリップ・ドット・コム・グループ) TCOM/ナスダック 観光、レジャー
09961/香港
5 海底撈国際控股(ハイディーラオ・インターナショナル) 06862/香港 飲食

 最近、中国消費者の間では、従来のように漠然と外国の商品やブランドを「面子(めんつ)」から追い求めるのではなく、値段が割安で、品質も保証されている国産ブランドを好んで買い、使う傾向があります。特に若い世代で顕著です。自動車、化粧品、衣類などを含め、分野は問いません。

 例として、中国の元体操選手で、1984年に開催されたロサンゼルス五輪男子団体総合銀メダルおよび個人総合銅メダルなど計6個のメダルを獲得した李寧(リー・ニン)氏が立ち上げた李寧(02331/香港)などは、そういう国産ブランドの典型といえるでしょう。中国市場におけるブランド力としても、「ナイキ」「アディダス」「プーマ」の3強に割って入るほどの勢いです。2022年2月に開催される北京冬季五輪はその勢いに拍車をかけるでしょう。

 中国消費者の物質的、精神的豊かさの追求にコミットしてきた日本企業も、「共同富裕」という今後長らく続くであろう「新常態」を戦略的契機としたいところです。

 自動車、アパレル、飲食、家電などを含め、中国の当局、企業、消費者の間では日本のモノづくり、商品、サービスへの尊敬と信頼の念は非常に深いものがあり、捉え方、動き方次第で日本企業は、「共同富裕」政策の最大の受益者になり得る資質を持つのです。

 と同時に、前述のハイテク、高齢化、グリーンという3大分野でも、日本の技術や管理経験、ブランド力は全体的に中国企業を凌駕(りょうが)しています。日本企業が中国の巨大市場から収益を上げるための契機が「共同富裕」政策だと、私自身は考えています。だからこそ、日本企業が従来の対中ビジネス、対中投資をリセットし、新たな戦略をもって臨むことが必要なのです。