世界投資の勝機とリスク

 2022年に、想定通り1ドル=120円を目指す展開になれば、日本の投資家は、海外資産の値上がり益のみならず、為替差益も見込めます。短期リスクとして、米インフレ・金利が想定以上に上振れる場合の、株価の急落、新興国の脆弱化、ドル安・円高も留意されますが、インフレと金利をシグナルとしてしっかり観測すれば、リスク回避後の株式反発と為替差益を繰り返し狙うチャンスになり得ます。

 さらにドル/円が120~125円を目指す世界では、リスクオンが極まり、日本からも海外投資が華々しく見えるでしょう。米国株式への一極集中投資から、欧州や新興国への分散も再評価されやすい場面と想定され、まずはこの相場に乗って最大限メリットを獲りにいくことになりそうです。

 しかし、相場もここまで来ると、コロナ禍で始まった超リスクオンのクライマックスという構え方が必要です。2004~2007年のリスクオン展開も、2008年にはリーマン・ブラザーズ破綻からの金融危機に陥りました。したがって、無頓着にリスク資産を買い進むのではなく、遠くない将来時点の売り方についての繊細な意識が必要と言えます。日本投資家の場合は、海外投資分について、中期的な為替ヘッジも検討しておく必要があるでしょう。

 グローバル・リスクオンは、現時点では、捕らぬ狸の皮算用のシナリオであり、頭の片隅に置いておくほどのことでよいでしょう。ただ、2022年の世界投資は、為替差益というメリットが重なる好機。その取り込みに乗り出すなら、株価のみならず、金利、ドル、円など複数市場の相互チェックで、リスク対応の構えもきちんと備えることが必須と心しています。

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