平時サイクルとの相異

 平時においては、ドル/円相場は、米国の景気サイクル、政策金利サイクルにかなり遅れて動く傾向が観察されました。これを単純化したのが[図2]です。ドル/円が上昇サイクルに入るのは、米景気が加速局面に入り、数回の利上げで相対的に高まった金利が海外マネーを引きつける一方、株式が業績相場で好調に推移する場面が典型です。

[図2]:米景気-市場サイクルとコロナ禍

出所:田中泰輔リサーチ

 それ以前の景気軟化~下降~回復局面は、米金融緩和から緩和解除直後の株式・債券安場面まで、ドル/円は下降サイクルをたどったものです。ただし、その間も米株式に金融相場が始まる場面の点A、そろそろ金融緩和解除かと中短期金利にじわり先高感が出る点Bで、ドル/円の売り持ちが巻き戻される上昇場面がありました。

 実は今般は、コロナ禍からの経済回復ペースがあまりに速いため、この点A、B、そして景気加速局面のドル高円安の条件が、部分部分、重なるかの様相です。2022年には、さらにこれが高じる可能性があると判断し、1ドル=120円を志向するイメージを抱いています。