「低金利である住宅ローンの繰り上げより運用で増やせばいい!」だけでは間違い

 住宅ローンは借り入れの中でも特に金利が低い特別なローンです。そのため、余裕資金ができたとしても低金利の今だから、借り入れたお金はそのままで投資に回して増やした方がよいと考える人も多くいます。

 住宅ローン自体が20~30年という長期の借入金であることを考えると、余裕資金があるなら、長期投資にお金を回すことも資産形成の選択肢として考えるべきでしょう。

 では、余裕資金ができたとき、繰り上げ返済と投資、どちらを選ぶべきなのでしょうか。

 単純にもうかる方がいいと安易に決めてしまうと思わぬ落とし穴にはまる場合もあります。これを避けるため、確認すべきポイントをお伝えしていきます。

繰り上げ返済前に知っておくべき必須の知識

 まずは、繰り上げ返済を検討するとき、何に着目すべきか、お伝えします。

繰り上げ返済前に必ずチェック1

返済計画とライフプランへの影響を検討

 住宅ローンの契約ではローン額とその返済期間を決めますが、繰り上げ返済実施の際は「返済期間を短くする」、または「毎月の返済額を減らす」のどちらか1つを選ぶことになります。

 繰り上げ返済することで支払い利息が減るものの、手元の現金も減るのです。大きな支出の予定があるとか、そもそも貯蓄が少ないときに繰り上げ返済すれば、あとあと問題になる可能性があるでしょう。

 例えば、数年後に車の買い替えを控えている場合は、カーローンの金利は住宅ローンよりも高い年2~3%程度が多く、住宅ローンの繰り上げ返済より、車の買い替えに現金を使ったほうがいいといえるかもしれません。

 支払い利息のみに気を取られるのではなく、その他の支出や将来のライフプランも考えた上で「お金の振り分け先」を考える必要があります。

繰り上げ返済前に必ずチェック2

住宅の売却価格と住み替えの可能性を考慮

 繰り上げ返済によって、ローン残高が減る点も重要です。

 住宅ローンは自分が住む住居に適用されるローンですが、家庭や会社の都合で住居を変わらざるを得ないなど、何らかの事情で住まなくなった場合は住宅ローンの適用外です。

 そのため、元の住宅ローンからアパートローン(賃貸住宅ローン)への借り換えを勧められることもあり、住居用に適用されていた各種控除も外れる可能性があります。金利が高くなる上に借入期間も短くなるなど、住宅ローンに比べて家計への負担が大きなものになります。

 この解消のため、住居を売却することでローン完済となれば問題はありません。

 予定外の出来事があったとき、住居を売却すれば住宅ローンを完済できるくらいローン残高を減らしておく準備は重要です。