日中国交正常化50周年の来年。岸田政権の行動力と矜持が試される

 本稿で示してきたように、習氏が共産党結党百周年というタイミングで「歴史決議」を採択した最大の政治的動機は、来秋の第20回党大会、およびそこから第3期政権に突入することにほかなりません。

 上記の文化大革命に関する記述などは、習氏の「反対派」を黙らせるための手段といえます。来年2022年に向け、低迷が心配される経済を持続的にどう改善していけるかは重要なポイントです。しかし、習氏がそれ以上に懸念しているのが、やはり対外関係でしょう。

 特に来年2月には北京冬季五輪が控えています。新疆ウイグルなどの人権問題で五輪参加ボイコットなどが集団的に起これば、習氏の権威に傷が付きます。バイデン政権が外交的ボイコットを通じて北京五輪開催に圧力をかける可能性も否定できません。実際に聖火リレーの道中で、コロナ禍にもかかわらず抗議デモ活動が各地で起こっています。残り3カ月半、予断を許さない状況が続くでしょう。

 その意味でも、15日に行われた習氏・バイデン氏初の米中首脳テレビ会談は、米国との関係を管理・制御可能な範囲でマネージしたい習政権側の意図がにじみ出ているといえます。昨今の米中関係には、協力・競争・衝突という3つの側面が共存していますが、習氏は、競争は認めつつも協力主導で両国関係を管理したい。一方、バイデン氏は、競争を主線と見なし、衝突も辞さない(協力も惜しまない)という姿勢であり、両者の間にはまだまだ溝が深いのです。

 習氏は冒頭、「古い友人」と呼称したバイデン米大統領に笑顔で手を振り、米中が協力していくこと、共に大国としての責任を果たしていくことを訴えました。バイデン大統領もそれに呼応するかのように、競争を衝突にしないよう共に努力すべきだと主張しました。

 私自身は、習近平第3期政権誕生にとって最大の不安要素は米国だと考えています。対米関係は、香港、台湾、新疆ウイグル、人権、共産党一党支配体制、そして中国国内の権力闘争など中国共産党の生存や権威そのもの、そして核心的利益に直結する問題を内包しているからです。

 これからの1年、北京冬季五輪から党大会へと向け、米中関係からますます目が離せません。

 日本にとっても他人事(ひとごと)ではありません。

 来年は日中国交正常化50周年という節目の年。日本としては中国との外交関係も安定的に管理しないといけないのです。

 一方、最優先事項は日米同盟の強化。中国と台湾の「TPP(環太平洋経済連携協定)同時加盟申請」という日本の経済安全保障に関わる複雑な地政学的状況をマネージしていかなければなりません。

 このような状況下で、国民の生命と財産をいかに守っていくか。岸田政権に課せられた世紀の難題であり、2022年、同政権の行動力と矜持が試される1年になるのは必至だと思います。