資源インフレを示す指標でドル買い強まる

 注目されていた米国10月CPI(消費者物価指数)は前月比+0.9%と、予想(+0.6%)を上回り、前年比では+6.2%と前月(+5.4%)から加速し、1990年11月以来31年ぶりの大幅な伸びを記録しました。

 モノや人手不足など供給制約の長期化や賃金やエネルギー価格などが、物価を押し上げている状況が続いています。前年比でエネルギー全体は30%上昇しており、中でもガソリンは前月比で+6.1%、前年比では49.6%の上昇となっています。食品は前年比で+5.4%、一時落ち着いていた中古車は前年比+26.4%、住居費は前年比3.5%の上昇となっています。

 このように米国の消費者物価は、前年比で5%以上の伸びが6カ月連続で続いており、FRB(米連邦準備制度理事会)が認識している物価の上昇は「一時的」との認識を揺るがせかねない状況となっています。

 ドル/円は、この数字を受けて、1ドル=113円台前半から113円台半ばまで上昇しましたが、CPIの大幅な上昇の割には利食い売りが優勢となり、伸び悩みました。しかし、その後米金利がじりじりと上昇する動きにドル買いが再び強まり、午後になると、米30年債の入札結果が低調であったことから金利が一段と上昇する展開になったため、ドル/円は114.00円まで上昇しました。

 しかし、その後は米11月ミシガン大学消費者信頼感指数が予想を下回り、2011年以来の低水準だったため、物価の上昇は消費者心理を冷やしたと思われ、113円台後半で推移していました。

 しかし、16日に発表された米小売売上高(+1.7%)が予想を上回ったことから、実際の消費者の行動は旺盛だったことが示され、米10年債利回りは1.6%を超える上昇となりました。

 この金利上昇を受けて、ドル/円は直近の高値114.70円近辺を抜き、翌日の東京市場では115円手前まで上昇しました。

 先日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、パウエル議長は早期の利上げを否定しましたが、10月のCPIや小売売上高を受けて、マーケットでは再び利上げ期待が高まってきています。

 年内は112~115円で足踏みと想定していましたが、早くも115円突破をうかがう動きとなっています。このまま115円を突破して、2016年12月の118円台半ばを目指す動きとなるのかどうかに注目ですが、一筋縄ではいかないかもしれません。

 114円を挟んだ攻防でみられたように、115円でも攻防がみられ、しかも5円刻みの心理的にも強い節目であるため、相当の攻防となるかもしれません。

 115円は5円刻みの心理的に強い節目であるだけでなく、2017年からのレンジの上限であるため、その突破には相当強い力が必要になります。しかし、これまでに110円から押し上げてきた圧力を弱める環境の変化もみられ始めています。

 例えば、物価上昇の要因であった資源価格の上昇は、欧州での天然ガスや石炭は頭打ちの動きとなっています。そして原油も上昇一服の兆候がみられ始めています。