日本株は堅調な米国株が下支えも、固有の買い材料に乏しい状況が継続

 11月10日に発表された米CPI(消費者物価指数)は前年同月比で6.2%の上昇となり、市場予想を上回り、約31年ぶりの高い伸びとなっています。短期的にサプライズは強まりましたが、その後、米長期金利の動向などは思ったよりも落ち着いた動きとなっています。

 来年半ばまでのテーパリング終了、来年からの利上げ開始などは十分にマーケットに織り込まれたと考えられ、金融政策を警戒視する動きは沈静化しつつあります。米国株市場にとっては買い安心感につながり、日本株の下支え材料にはなってきそうです。

 ただ、日本株に関しては、3万円以上を買い上げる動きはなかなか期待しにくい状況です。19日に発表される経済対策にも期待感は乏しく、当面は日経平均のパフォーマンスは世界市場を下回るものと考えられます。

 今後の市場の注目点としては、米国のクリスマス商戦の行方などが挙げられます。16日には米小売売上高、ウォルマートやホームデポなどの小売企業の決算発表が予定され、年末商戦への期待の程度が推し量れるものとなるでしょう。

 また、中国の景気動向に対する関心も続きそうです。15日に発表された鉱工業生産などは市場予想を上回っていますが、固定資産投資は減速傾向が続いており、不動産開発大手の先行き懸念なども拭えない中では、まだ期待感は高めにくいものとみられます。

 通常、この時期は新春相場の上昇を意識した年末ラリーへの期待も高まりやすいですが、現状ではそのような楽観的な動きは想定しにくい状況です。下値は堅調な米国株動向が支えとなりそうですが、債務上限問題の再燃次第では、このシナリオも崩れる可能性があります。

 7-9月期の決算は想定以上に悪くならなかった印象があります。比較的、原材料費の上昇などを想定して、下期の業績が保守的な銘柄も多くありますが、需要が好調な分野では製品価格への転嫁も見込まれるため、上振れ余地は大きいと考えられます。

 住宅関連や自動車関連分野などでは、こうした価格転嫁が可能と考えます。逆に、非鉄金属や鉄鋼、海運など、これまで市況の上昇メリットを強く受けたところは、今後は買い材料が乏しくなってくると考えます。

 半導体関連に関しても、日米関連銘柄の決算発表が期待材料となっていただけに、18日の米アプライドマテリアルズの決算発表後は、あくまで短期的にですが、好材料出尽くし感が強まりやすいとみられます。

 東証再編の動きも引き続き中期的な注目材料となります。とりわけ、プライム基準を満たすための株式売出しの動きなどは強まる可能性があり、対象となりそうな銘柄はしばらく長期投資を避けることが無難です。

 なお、流通株式時価総額100億円未満の銘柄は、2022年10月からTOPIX(東証株価指数)が段階的にウエートを低減させていく予定にもなっています。