相場情報のトリセツ

 では、どうするか。筆者流の相場情報のトリセツをご紹介します。踏まえるべきは

(1)市場情報の大半は足元の相場を追認する後講釈
(2)市場予想の多くは、予想というより、今を語るもの
(3)相場は波動で、情報解釈の明暗をあっさり手のひら返しするもの

 ということです。

 このため、相場で出回る情報を鵜呑(うの)みにするのではなく、市場に出回る情報の性質を踏まえて、時に便乗し、時に距離を置く視座が必要です。

 相場分析を大別すると、一つは特に短期相場において、市場の投資ポジション状況です。投資ポジションはそれを持つ人の心理・行動を制約し、情報解釈をゆがめます。そしてポジションがどの買い入れ水準で、どれほどの量があるかが、市場の情報の織り込み度を表します。

 もう一つは、ファンダメンタルズで、より長期の相場において重要さを増します。

 ただし、マクロ分析の専門家として申し上げると、通常の景気サイクルでも実感的に予想を持てるのは2年程度まで。他方、足元の情報は相場波動次第で明暗揺れ動き続けます。この両面を組み合わせると、情報解釈は今出回っているものから一定の距離を置き、3カ月程度先の目線で考えることを心掛けます。そして、それを2年先までの想定イメージに延長してイメージします。その上で、日々の情報、相場動意を踏まえて、3カ月観察眼をロールオーバーし、2年想定をアップデートし続けます。

 筆者の体験的理解では、相場において人の知力と投資の実用が重なるのは、せいぜいこの時間軸まで。予想はかくの如(ごと)しでたわいないものと理解し、投資を張るのは予想ではなく、予想を組み立てるロジック(インプットする最新データ)と心しています。それによって、日々の情報に惑わされずに、新たにデータを得た時点でいち早く対応できます。

 筆者は、10月後半から米株式の高速ラリーを中長期大相場の予兆としてフルに乗る一方、相場が楽観に傾くほど、情報解釈の明暗が入れ替わる波動の転換を意識して、短期相場には半身の構えをとります。

 筆者のトウシルにおけるレポート・動画は、このスタンスの情報発信で一貫しています。皆さまそれぞれの相場情報のトリセツを整えていく一助になれば幸いです。

■著者・田中泰輔の新刊『逃げて勝つ 投資の鉄則』(日本経済新聞出版刊)が発売中です!