健全な配当と無理をした配当の違い
もし、1株当たり当期純利益が100円で配当金が30円だとすると、配当性向は30%です。
30%=30円÷100円
仮に、この会社の翌年の当期純利益が半分の50円になったとして、配当金を30円に据え置いても、当期純利益の範囲内で収まります。
60%=30円÷50円
では、1株当たり当期純利益100円で、配当金も100円という会社はどうでしょう。配当性向は100%です。これは、稼いだ利益の全てを配当金に回していることになります。
仮に、この会社が来期以降、利益を減らして1株当たり当期純利益が50円になったらどうでしょうか。もし今までと同様、100円の配当金を出すと、配当性向は200%となります。
配当性向が100%を超えるということは、当期純利益を超えた金額を配当に回している状況を意味しています。これは会社からお金が流出している状況であり、配当政策としてはかなり不健全な状態です。
1~2年くらいなら、今までに上げた利益の蓄積から、当期の利益を超える配当金を出すことも可能でしょう。しかし、いつまでもそんなことができるわけではありません。
となれば、今期の1株当たり当期純利益100円、配当金100円だったのが、来期の1株当たり当期純利益が50円に半減となれば、配当金も50円以下になるケースが多いはずです。
つまり、配当性向が高いと、将来利益が減少したときに配当金を減らされるリスクが他の銘柄に比べて高くなるのです。
高配当利回り銘柄の多くは配当性向も高い
高配当利回り銘柄にはある特徴があります。それは「配当性向が高い」ということです。
配当利回りが高いからお得に見えたとしても、それは配当性向が高いため、将来、配当金が減らされるリスクも高いことを、織り込んだ株価になっている可能性が十分考えられます。
以前、ある銘柄のIPO(株式新規公開)時に、「配当利回りがとても高いんですよ」と証券会社からセールスを受けました。
確かに業績もそれなりに安定していて、配当利回りも高ければ、日々の株価の変動を追いかけるのを嫌い、高い配当金をもらえる株をじっくり持ち続けたいという投資家には、悪くはありません。
ところが、筆者がその勧誘された銘柄の配当性向を確認すると、100%に近い数値となっていたのです。
前回のコラムでもお伝えしたように、配当利回りが高い銘柄が配当金を減らされると、配当金そのものが少なくなるだけでなく、株価も大きく下がってしまう可能性が高まります。
したがって、配当性向が高い銘柄は、配当金が将来減らされるリスクが高いため、配当利回りが高くても安心できない、と考えた方が無難です。