お金の「自由度」

 お金には、「使い道を後で最適に決めることが出来る」という大きな長所がある。

 つまり、子供の教育費のためとか、老後の生活費とか、あるいは社会貢献のため、といった「使途」は、お金を得た後で考えたらいい。もちろん、将来お金を使うためには、そのお金を用意しなければならないが、資金の使途は、効率よくお金を増やすことには無関係だから、運用にあって考える必要はない。

 つまり、資金の使途で運用商品の種類を変える必要は無い。率直に言って、資金使途と運用商品を関連づけるのは、金融商品の売り手側が仕掛けた「ストーリー」に乗せられる行為だ。

 加えて、金融的な意思決定にあっては、ある投資額の2倍投資するか、半分投資するか、といった「スケールの伸縮性」がある。

 従って、リスクを大きく取ってもいい人は大きな金額をリスク資産に投資すればいいし、小さなリスクがいい人はリスク資産への投資額を減らすといい。どちらの人も、「リスクに対してリターンの効率がいい対象(の組み合わせ)」に投資すればいい。

 つまり、投資家のタイプによって、選ぶべき運用商品が変わるという話も、売り手側が作ったフィクションなのだ。

「使途の自由」と「スケールの伸縮性」の2つの性質は、お金が持つ「自由度」として重要であり、これを上手く生かしたい。

 特に、運用商品の選択ではなく、投資金額でリスクの大きさをコントロールするのが適切であることは、多くの投資家の盲点になっている(だから、世の中には夥しい数の運用商品があって、現実に売れているのだろう)。

 金融機関に運用に回せるお金の額を見せて、運用商品の種類を変えながら、これを全額投資するように誘導されるのが、典型的な失敗のパターンだ。