全体としては悪くないポートフォリオも、個人としては二極化

 運用についてはどうでしょうか。この20年間については「10%の進化」があったとみています。

 制度がスタートして10年、確定拠出年金の投資割合は「元本確保型商品6割:投資信託4割」と説明されてきました。制度の導入形式や導入タイミングなどに影響されるものの、全体としての流れは「投資4割」だったわけです。

 近年の統計データなどを見ると「元本確保型商品5割:投資信託5割」になっており、最新の市場動向を勘案すると、「投資5割超え」となっていることが予想されています。

 全体としては悪くないポートフォリオです。リスク資産の運用成績が年利4~5%であったとすれば、全体として年利2.5%くらいになり、多くの企業が設定している想定利回り(2.0ないし2.5%のことが多いという)をクリアしています。投資比率がもっと高い個人はこれをはるかに上回る運用成績を確保していることでしょう。

 一方で、「安全資産100%」の個人をどう動かすかは次の20年の難問です。米国では行動ファイナンスの研究成果を受けて、401(k)プランを「加入半強制、運用半強制(変更は可能)」という制度とし、結果として国民の資産形成を強く後押しする仕組みになっています。

 日本では運用未指図である人について、バランス型ファンドなどを自動的に購入させる指定運用方法(デフォルト商品)の試みなどが始まっていますが、まだ部分的な試みにとどまっています(それでもiDeCoや企業型DCで投資理解が浅い場合にも、投資信託活用の背中を押す取り組みが行われたことは評価できます)。

 投資信託の、商品としての投資条件はおおむね良好です。長期的な視点で考えたとき、リスク資産の運用の力を借りることの意義を認め、どう背中を押していくかが問われていく「次の20年」となりそうです。

成人してなおまだまだ変化し続ける確定拠出年金

 確定拠出年金制度は20年を迎えてまだ制度の改革を試み続けています。

 これまでも、拠出限度額の引き上げやマッチング拠出の導入などを改正で行ってきました。iDeCoの加入要件緩和のように大きな手応えのある改革もありました。

 前述のとおり、来年度以降も「企業型DC加入者のiDeCo加入」が無条件で解禁となりますし、「企業年金全体として限度額を考える仕組みの導入(確定給付企業年金が薄い場合、DCの限度額がアップする)」などの改革も用意されています。

 これからもおそらく、拠出限度額の引き上げや特別法人税の廃止などの改革がトライされていくことになるはずです。20年後の確定拠出年金は、きっと今の確定拠出年金よりも魅力的な制度に進化していくことでしょう。

 20周年といってもまだまだ、成人になったばかり、社会に羽ばたき、世の中のために本当に役立つ制度になっていくのは、これからです。

 iDeCoや企業型DCを活用し、ぜひあなたの老後の豊かさを実現する力にしてほしいと思います。

DC(確定拠出年金)20年史(その1)を読む
DC(確定拠出年金)20年史(その2)を読む
DC(確定拠出年金)20年史(その3)を読む
DC(確定拠出年金)20年史(その4)を読む