2021年夏、主要国・地域で大きな変化が発生

「2021年夏」に、世界規模の大きな変化がみられたと書きました。以下がその変化です。

図:2021年夏に起きたさまざまな変化 [1]

出所:筆者作成

 米国では、金融政策が転換点を迎えました。7月28日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、金融緩和策を段階的に縮小させるテーパリングの議論が始まったことを認めました。新型コロナショック直後に強化され、それまで、株価指数や各種コモディティ(商品)価格を底上げしてきた金融緩和が終わりを迎える議論が始まったのです。

 中国では、各種規制が強化されました。IT関連では当局が海外市場へ上場を目指す企業を審査する、ゲーム関連では当局が未成年のネットゲームの利用時間を制限する、教育関連では当局が民間の学習塾産業を事実上禁止する、などの規制が導入されると報じられました。こうした規制強化は不動産業界にも及び、9月の「恒大ショック」へと発展しました。

 欧州などでは、新型コロナの感染状況が悪化しました。ワクチン接種は進んでいるものの、域内の新規感染者や新規死亡者が、大きく増加し始めました。EU(欧州連合)のほか、ロシア、米国は、感染状況が改善しつつあるアジアやオセアニア、南米などと一線を画した状況です。感染拡大を容認しながら経済活性化を目指すねらいがあるものの、新規死亡者数が増加傾向にあり、大きな懸念が広がっています。

図:新型コロナ 人口100万人あたりの新規死亡者数 単位:人

出所:Our World in Dataのデータより筆者作成

 OPECプラス(※)は、7月18日に開催した会合で、2022年12月までの生産計画を固めました。毎月日量40万バレルずつ、原油生産量を増加させる方針です。現在、減産期間中にあるOPECプラスにとって、計画的な増産(減産規模縮小)は、生産量の正常化に向けた重要な政策です。

 OPECプラスは9月の会合の前に、米国政府から追加増産の要請を受けましたが、会合では、追加をせずに、計画通りの量を増加させることを決定しました。彼ら自身の計画を順守する姿勢を鮮明にしたわけです。原油価格を下落させたい米国側の意向をくまなかったことが一因で、原油価格の上昇が加速する場面もありました。

図:OPECプラスの原油生産量(減産に参加している20カ国) 単位:千バレル/日量

出所:ブルームバーグ、OPECの各種資料をもとに筆者作成

※OPECプラス…サウジアラビア、イラクなどOPEC加盟国13カ国と、ロシア、アゼルバイジャンなど非加盟国10カ国の合計23の主要産油国のグループ。世界の原油生産シェアはおよそ50%。2021年9月時点。