ファンドマネジャーにとってもうれしかった「積立投資」

 私は、25年間、年金・投資信託などの日本株を運用するファンドマネジャーでした。ファンドマネジャー時代に、とても残念に思ったことと、うれしかったことがあります。

 まず、残念なこと。私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ運用ファンド)では、日経平均の高値圏で設定(買い付け)が増えるのに、日経平均の安値圏では、ほとんど設定がありませんでした。

 株は安いときに買って、高くなったときに売ると利益が得られるわけですが、公募投信では、残念ながら、その逆の動きが見られました。

 次に、とてもうれしかったこと。私が運用していたファンドが、DC(確定拠出年金)の運用対象となったことです。多数の企業に採用していただけました。

 DCでは、毎月、一定額の設定が入り続けます。加入者の方に、定時定額で積立していただいたことになります。そうすると、日経平均の高値でも、安値でも、淡々と設定が入ってきます。

 日経平均が大暴落して世の中が総悲観になっているとき、往々にして、絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネジャーとしては、そんなときこそしっかりと投資を増やしてほしいと思います。ところが公募投信では、そういうときに設定が入ってきません。

 私が運用していたDCファンドでは、定時定額の積立投資が入ってきますので、リーマンショックで日経平均が大暴落し世の中が総悲観になっているときでも、淡々と積立が入ってきました。

 今年のコロナ危機でも、積立投資では安いところでも、投資が続けられています。

 誰でも、株は安いときに買って高いときに売りたいと思うのでしょうが、言うのは簡単でやるのはとても難しいことです。そうするためには、世の中総悲観になっているときに株を買い、みんなが明るくなって強気になっているときに株を売らなければなりません。

 それは、少しひねくれた人にしかできないことです。普通の素直な人は、みんなが明るくなっているときは株を買いたくなり、暗くなっているときは株を売りたくなるでしょう。

 普通の素直な人は、変にいいタイミングで株を買い、いいタイミングで売ろうとしない方がいいと思います。それでは、どうするべきか? 私は、定時定額(たとえば毎月1万円)の積立投資をしていくべきと思います。

積立投資のもう1つの効果、支出を収入の範囲に収める習慣が身につく

 毎月1万円の投資を行うためには、その分、支出を絞らなければなりません。収入を上回る支出を行っていると、積立投資はできません。

 積立投資をする習慣を身につければ、自動的に、支出が収入を下回るようにコントロールする習慣を身につけることになります。