長期市場実績で円換算の内外株式リターンを比較する

 筆者は、「資産形成にはグローバルな視点が重要である」と考えます。そこで投資家が不安視しやすい要因が「為替リスク」(為替相場のブレ)です。ただ、特に定時定額投資(積立投資)については、外貨が下落する場面でも「ドルコスト平均法」が効果を発揮することに注目です。

 要するに、「為替リスクはあっても、長期的な株式リターンが高そうな外国株式への長期分散投資」を重視したいと思います。資産形成では長期市場実績に基づくリスク分析やリターン分析を参考にします。

 図表3は、過去30年にわたる米国株式(S&P500指数とナスダック100指数)、外国株式(日本を除くMSCI世界株価指数)、日本株式(TOPIX(東証株価指数))のリターン(年率平均)とリスク(標準偏差)をマトリックス化したものです。

 S&P500指数(円)のリターンは9.4%(配当を含まない年率平均)で、リスクは18.1%。ナスダック100指数(円)のリターンは16.5%でリスクは26.0%でした。一方、日本株式のリスクは18.1%と高かったのにもかかわらず、リターンが低かった(2.2%)ことがわかります。

 R/R(リターン÷リスク=リスク単位当たりリターン)を分析すると、米国株式を「コア」に据えるグローバル分散投資を実施する方が高い投資成果を期待できたことがイメージできると思います。

<図表3:米国株、外国株、日本株の円リターンを比較する>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年)

 図表4は、図表3の根拠となる1991年から2021年の市場実績値を一覧表にしたものです。為替リスク(外貨の円に対する変動)は、リスク(投資対象市場のリターンのブレ)をやや高めましたが、米国株式や外国株式それぞれのドル建てリターンと円換算リターンにはほとんど影響を与えなかったことがわかります。

 長期国際分散投資を実践する場合、そして特に定時定額投資を実践することで、為替リスクを乗り越えた「日本株投資を上回るリターンを確保することができた市場実績」を確認できます。グローバル投資を中心に据えた資産形成にあたっては、為替の短期的な変動を気にし過ぎないようにしたいと思います。

<図表4:内外市場別のRR(リターンとリスク)分析>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年)

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