総裁選・衆院選への株式市場の評価、2つのシナリオ

 9月9日のレポートで私は2つのシナリオをお見せしました。株式市場にとってのバラ色シナリオと悲観シナリオです。その2つのシナリオを、そのままここに再掲します。

◆株式市場にとってのバラ色シナリオ

  1. 自民党総裁選で足の引っ張り合いでなく、前向きな政策論議が尽くされる。
  2. 派閥主導でなく派閥のしばりのない自由投票が行われる。
  3. 選出された新総裁のもとで、自民党が結束する。
  4. 自民党の支持率が上昇する。
  5. ワクチン効果で日本のコロナ感染がピークアウトし始める。
  6. 衆院選で自民党が勝利。
  7. 新内閣が大型の財政出動を打ち出す。

◆株式市場にとっての悲観シナリオ

  1. 自民党総裁選は足の引っ張り合い
  2. 派閥の力が大きく影響する選挙に
  3. 新総裁の元に自民党が結束できず
  4. 自民党の支持率の低迷続く
  5. コロナ感染は高水準のまま
  6. 衆院選で自民党が大敗
  7. 弱体化した政権下で思い切った政策を打ち出せない

 2つのシナリオのどちらに近い展開になっているか、途中経過を評価します。まず、1.総裁選で足の引っ張りあいでなく前向きな政策議論が尽くされる、についてはほぼ完璧だったと私は評価します。

 問題は2.3.4.です。総裁選では派閥のしばりのない自由投票が行われましたが、結果を見ると、派閥の力が大きく影響する選挙だったと思います。それが、自民党の幹部・組閣人事に色濃く表れています。

 岸田政権が自民党を結束させられたかというと、現時点で疑問があります。組閣人事に違和感を唱える声が自民党内に出ています。

 出たばかりのメディア各社の内閣支持率を見ると、国民の支持率を高めて政権基盤を強化することにも、あまり成功していると言えません。かねてより世論調査で支持率が高かった河野太郎氏の処遇にも疑問が出ています。

 ただし、始まったばかりの岸田政権の評価は、これから実施する政策によってどのようにも変わる可能性があります。資本主義の構造改革と成長戦略を強力に進める政権と見られるようになれば、外国人投資家の評価は高まります。

 最後に注釈です。本レポートでは日本株を動かす外国人の見方を解説することに力点を置いています。特定の政治家や政党を応援する意図はありません。

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