外国人投資家にとってネガティブに聞こえたポイント

 岸田政権の目指す方向として「新しい日本型資本主義」があります。小泉政権・安倍政権が進めてきた新自由主義からの転換を訴えています。

「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を防ぎ、成長のみ、規制改革・構造改革のみではない経済をめざす」と言っています。

 外国人投資家は、小泉政権と安倍政権を高く評価していたので、そこで進めてきた規制緩和や構造改革に否定的であることはネガティブに聞こえます。

 岸田首相は、格差縮小も成長も規制改革も構造改革も全部重視すると言っているように聞こえますが、格差縮小に一番力点が置かれていることが文脈からうかがえます。その流れの中で、金融課税強化を打ち出したことは、3つの点からネガティブでした。

【1】ベンチャースピリット育成にマイナス

 ベンチャースピリットの欠如が、日本からベンチャーが生まれにくい理由の1つです。リスクを負ってベンチャー起業して成功した時にIPO(新規株式公開)で得られる株式売却益への課税を強化する方針は、ベンチャースピリットの育成にとってネガティブです。

 日本に株価を意識しない経営者が多いことを是正するために、ストックオプションなどを利用した株価連動型の報酬を増やす流れが出ていましたが、株式市場から得られる収益に課税を強化する方針は、その流れにも反します。

【2】自分年金作りを推進する方針にマイナス

 公的年金だけでは老後の生活費が不足する可能性があることを示唆する報告書が、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」から出されてから、自分年金作りを推奨する流れが続いています。

 長期金利がゼロで債券投資では資産形成が難しい時代に、適切にリスクを管理した上で株式投資を採り入れることが求められていますが、株式投資への課税強化はこの流れにも反します。

【3】株式市場に対してフレンドリーでない首相と見られた

 欧米では、資本主義の成長戦略を進める政権リーダーは、その成果を見る指標として株価を重視しています。岸田政権が就任早々に株式投資収益への課税強化に言及したことで、岸田政権は株式市場に対してフレンドリーでないと取られた可能性があります。

 岸田政権の政策全容が見えているわけではないので、これからのメッセージの出し方で、外国人投資家の見方は変わる可能性があります。ただし、就任直後に出したメッセージからは、株式市場にとってフレンドリーでない首相と受け取られた可能性があります。