10月に注目したい新興株の動き

 10月の新興株、(現時点では)「上がりそうな匂いが全然しない…」と感じている投資家が多そう。それくらい、9月末からの大逆流は、個人投資家の心を折る展開だったように思います。

 証券業界の解説者の大半が「まだ上がる」と言っていた海運株が急落(急落すると手の平返しになっている気がしますが)。

 上半期の上げが強かった銘柄に片っ端から売りがバンバン入っているような雰囲気で、レーザーテックなど半導体株、ベイカレントなど大型グロース株がすさまじい勢いで下げています。

 謎の覚醒モードに入って3万円を超えた日経平均株価も、証券業界の解説者は「これでも割安だから3万2,000円になってもおかしくない」的論調を主流にしていましたが、猛烈なスピードで上げた日経平均も猛烈なスピードで逆流(下落)しています。

 一方で、このタイミングで緊急事態宣言が全面解除され、コロナ経口薬の進展ニュースもあってアフターコロナ株(リオープニング銘柄)が買われています。

 アフターコロナ株の波に乗っている投資家も多いのでしょうが、圧倒的多数は海運の急落、任天堂の安値、そして日経平均の水準切り下げに“逆張り”で買い向かっているように見えます。

 値ごろ感で買っては崩されロスカット、リバウンドを信じてホールド…つい先日まで、売り方の買い戻しも誘発しながら好需給でモメンタムをつくっていた銘柄群が、需給を短期間で悪くしてしまった印象です。

 関与した個人マネーが大きいだけに、個人の信用評価損益率も悪化。これが、個人メインの新興株市場にはマイナス要素となります。

 加えて、FOMC後の米長期金利上昇で米グロース株が弱いこと、中国恒大集団のデフォルト懸念を無傷で通過できる気がしないこと、新興株でいえば大型のアフターコロナ株が極めて少ないこと―なども気掛かりで、冒頭に戻りますが「上がりそうな匂いが全然しない…」な10月の新興株市場。

 とはいえ、ここから「大きく下がりそうな匂いもそこまでしない…」のが今の新興株市場でしょうか。海運活況に乗ってマザーズも上がってきたわけでもなく、日経平均大幅高の9月もマザーズは月間マイナス。IPOも初値で2倍になる銘柄がある程度で、初値11倍高銘柄が生まれた昨年のような過熱感は皆無です。

 この雰囲気の中、「新興株が上がるカタリストがない」という状況といったところ。反動が出るほどの過熱感が手前で発生していないけど、あえて新興株を物色する理由がない…。

 目下では、人気銘柄の株価急落で信用評価損益が悪化し、個人のセンチメントが悪く、需給的なアゲインストが強くあります。こういう場面では、需給要因で大きく崩れた銘柄の押し目を拾うとか、安く仕込むチャンスを待つくらいのスタンスが良さそう

 ちなみに10月のマザーズ指数は、過去10年のうち8回、9月と逆の動きになった」というトラックレコードがあります。9月に上昇したのが6回で、10月はそのうち5回が下落。9月に下落したのが4回で、10月はそのうち3回で上昇しています。

 今年の9月は下げていますので、10月が反転上昇になってもおかしくないように思います(海運や半導体に向かっていた短期マネーは、アフターコロナ株も一巡すれば、必ず別の何かに向かうはずです)。