専門家・評論家の見解と個人投資家がすべきこととは全く別

 専門家・評論家の仕事の一つは、今起こっている事象を読み解き、将来の株価の動向を予測することです。そのため、彼らも恒大集団問題につき、「非常に深刻な事態だから株価の大きな下落に注意すべき」とか「特段心配することもなく株価は再び上昇に転じるだろう」といった予測を行っています。

 では、私たち個人投資家は、専門家・評論家により異なる将来の予測を参考に、今後の投資行動を決定していくべきなのでしょうか。筆者は決してそうは思いません。

 筆者は常々「個人投資家は将来の予測をしてはいけない」と申し上げていますが、その理由は、将来の予測に従って行動した結果、予測が外れた場合、大きなダメージを受ける可能性が高いからです。

「この件は大したことはない」と思って大量に株を買ったところ、意に反して株価が急落したら多額の損失を被ってしまいます。

 逆に「これは由々しき問題だ。守りを固めるべき」と考えて、株への投資をやめてキャッシュで待機していたところ、意に反して株価は大きく上昇したならば、得られるはずだった利益が得られなくなってしまいます。

個人投資家が取るべき実践的な対処法とは?

 では、このように懸念材料がマーケットに存在しているとき、個人投資家はどのような実践的な対処をするべきなのでしょうか?

 筆者が最も大事だと考えているのが「売買ルールの設定」です。

 懸念材料によりマーケットが大きく変動するとき、売買ルールがないとどうなってしまうでしょうか?

「◯◯の破たん懸念でリーマン・ショックの再来!」と聞けば、あわてて保有株を全部売ってしまいたくなるかもしれません。でも、その後「政府救済の見通しが立ち危機は回避濃厚に」と報じられて株価が急騰したら、全て売ってしまった株を高く買い直す羽目になります。

 そこから「どうやら政府は救済しない見込みだ」となり再び株価急落となったら、やっぱり駄目だと再度保有株を全部投げ売りする……。

 このように、株価の変動に振り回されていては、損失が積み重なってしまいますし、利益を得ることは非常に困難になります。

急落・急騰時に筆者はどう対応したか?

 筆者は保有株ごとに、25日移動平均線割れで売却することを基本ルールにしています。9月21日の大幅下落時、確かに保有株も下落しましたが、25日移動平均線割れの銘柄はそれほど多くありませんでした。ですから保有株のポジション(建玉)は10%減ったくらいです。

 9月24日には急反発を見せたわけですが、この時25日移動平均線を割れていない銘柄は保有を続けていましたので、急反発の恩恵を受けることができました。

 もし、ここから株価が再度上昇に向かえばポジションを増やしますし、下落方向が明確になればポジションは減っていくことになります。これは全てルール通り動いている結果であり、懸念材料に対するニュースなどに振り回されることはありません。

 なお、懸念材料により株価が大きく下落するのが心配であれば、ポジションを減らすのがよいと思います。結局、株価が大きく下落して大きな損失が生じるのが不安なわけですから、保有する株の量を減らし、大きく下落しても耐えうるポジションになるまで縮小すればよいのです。

 ここで保有株を全て売ってしまうと、懸念材料が実はそれほど大したことなく、株価が急反発したとき、完全に乗り損ねてしまいます。

 株価が将来どうなるかは誰にも分かりません。ですから客観的な売買ルールを作り、株価が上がっても下がっても、株価に振り回されることなく淡々と行動できるようにしておきましょう。