米国株式市場の命運を握るのは個人投資家の動向?

 以下のチャートは、S&P500指数の過去のベアマーケットのボトムからの動きと現在の動きを示したものである。過去の事例と比較すると、2019年5月あるいは2006年5月の動きに類似している。いずれもこのあと一時的ではあるが、調整局面に入っていることには留意したい。

S&P500の現在の推移(青)と過去の推移(グレー)の比較

出所:SentimenTrader

 これまでの調整局面において、必ずと言って良いほどBuy the Dip(押し目を買う)をしてきた個人の買いのフローが低下してきているという。

 ゼロヘッジの記事Collapse In Retail Investor Euphoria Points To "Imminent Correction", Vanda Warns(個人投資家の幸福感の崩壊は「近い修正」を意味する、とVANDAは警告する)から抜粋してご紹介したい。

S&P500指数(青)と個人投資家のETF購入(赤)

出所:ゼロヘッジ

 マーケットにおけるオーダーフローを追跡するVanda Researchによると、個人投資家によるETF(上場投資信託)の買いは引き続き活発ではあるものの、その規模は過去の相場低下局面に比べて不十分である。

 個人投資家の株式上昇を支える意欲が減退していることから、機関投資家が売り続けた場合、より大きな暴落が起こる可能性が高くなると指摘している。

 相場をけん引するテクノロジー株のアウトパフォーマンスには、2つの異なるフェーズがある。最初の段階は、通常、バリュエーションが魅力的なときに取引に参加する機関投資家が主体となる。

 そして、第2の局面は、FOMO(Fear Of Missing Out:乗り遅れる恐怖)に駆られた個人投資家が取引に参加したときに起こる。そして、現在はFOMOの段階にあり、市場の主導権が明らかに個人投資家の元にあることを示しているという。

 ウォール街の大手銀行がやや、あるいは非常に弱気になっている一方、個人投資家が株式や株式ファンドを強いペースで購入していることがこれまでの相場の一つの救いになってきた。

 株式への個人投資家の買いの流れが大きく鈍化しない限り、株式の調整のリスクはそれほど高くはならないだろう。しかし裏を返せば、今後の相場の鍵を握るのは、個人投資家の動きになるということだ。