リスクの見当をつけろ

 リスク資産で運用しようと思う時に、損した状態を始めに想定する人は少ない。通常は「これくらい儲かると、まあまあいいな!」というイメージを抱くことから投資を検討するはずだ(それ自体は悪いことではない)。

 しかし、たとえば「内外の株式のインデックス・ファンドに概ね半々に投資していると、リスクは15%から20%の間位なので、リターンの期待値を5%~6%として、マイナス2標準偏差のイベントが起きた場合でも、1年後の損失額は投資額の3分の1に収まる。これを一応の最悪のケースのめどとしよう。…」といった、考えを「意識的に努力して」巡らせて、リスクの見当を付けることが決定的に大事だ。

 リスクの話は、初心者には(学生にも)なかなか伝わりにくいのだが、相手の理解に応じて、どうしても具体的に使えるように話しておかなければならない。リスクに正面から向き合わないと、たとえば、先般策定されたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオを含む運用計画のような、初歩的な間違いを(結果が吉と出るか凶と出るかは、今の時点では分からないが、作成過程は滅茶苦茶だ)、個人も犯すことになる。

「長期投資していれば、あなたは必ず儲かる」というような、リスクを軽視させようとするような言辞に影響されるのは愚かだ。その発言者は、嘘つきであり、有害な人だ。

手数料を重視せよ

 運用商品の売り手は、「実質的な手数料」の重要性を十分教えてくれないことが多いが、運用商品の評価と採否に当たって、決定的に重要なのは、販売会社と運用会社を合わせた「売り手」が得るその商品の実質的な手数料であり、実質的手数料は投資家にとって、「リスク・ゼロで実現する確実にマイナスの期待リターン」だということになる。

 これは、同時に、実質的な手数料の分からない商品は、自分にとって期待リターンが分からない商品なのだから、投資してはいけない商品だ、ということをも意味する。

 個人年金保険を含む多くの保険商品、加えて、仕組みの条件の中に実質的な手数料を潜ませている仕組み債券・仕組み預金などの「仕組み商品」(実質的手数料は大きい)のほぼ全ては、始めから避けていい商品だ。相手にする必要はない。

 また、たとえば日本株に投資する投資信託で、信託報酬が1.5%のアクティブ・ファンドと、0.5%のインデックス・ファンドがあるとすれば、前者に投資することは5割に満たない勝率のギャンブルに賭けることと同じだ。「アクティブ・ファンドの平均はインデックス・ファンドに負けており」、「いいアクティブ・ファンドを事前に見つけることはできない」のだから、論理的に実質手数料の高いアクティブ・ファンドへの投資は「常に」却下されることになる。

「手数料は高くても、運用が上手いアクティブ・ファンド」などというものは本来選ぶことが出来ないし、勧める人がいたら、その人は自信過剰か商売のために嘘をついている人だ。