注目の中国株2:アリババ集団(09988)

 中国を代表するEC(電子商取引)企業です。中核ビジネスは国内小売ビジネスで、零細企業や個人が出店する淘宝網(タオバオ)、比較的規模の大きな企業が出店する天猫(Tモール)が主力プラットフォームとなります。

 出店側から徴収する手数料、年会費、広告料、分析ツール使用料などが主な収入源で部門別売上高(2021年3月期、以下同様)では、全体の66%を占めています。国内の卸売、海外の小売・卸売、国際物流などの収入を合わせるとEC事業全体で87%となります。そのほか、クラウドが8%、デジタルコンテンツ、ハイテク事業などが5%です。

 2021年3月期は香港に上場する大型スーパーのサンアートリテール(06808)を買収、これが連結対象となったことで41%増収となったのですが、独占禁止法違反による制裁金の発生などから1%増益にとどまりました。

 2021年4-6月期は34%増収、5%減益となりました。サンアートリテールの買収効果を除いても22%増収で、売り上げは堅調です。しかし、独占禁止法違反に問われたことでこれまで以上に出店業者獲得のためのコストが上がっているようです。

 最大の懸念材料である当局との関係悪化についてですが、前述のように9月2日、共同富裕に対して1,000億元を拠出すると発表しており、関係改善の道筋が見えてきました。

 短期的には業績の伸びはまだ鈍化しそうですが、株価は9月20日現在、上場来安値近辺にあり、織り込まれつつあると見ています。

 長期的には、「オンラインとオフライン(実店舗)といった売場にビッグデータ、AI(人工知能)、ブロックチェーンなどの最先端技術を融合させ、さらに商品の生産、流通、販売までを一体で発展させる」といった発想の「新小売り」戦略に期待しています。

注目の中国株3:美団(03690)

 テンセントが出資する中国を代表するネット出前企業ですが、事業は多角化しています。部門別売上高(2020年6月中間期)では、ネット出前が54%、レストラン、ホテル、旅行チケットなどのオンライン販売が19%、生鮮食品、生花、医薬品などのオンライン販売といった新ビジネスが27%を占めています。

 2021年6月中間期は95%増収、82億461万元の赤字(前年同期は6億3,141万元の黒字)でした。既存事業の売上高は8割を超す伸びを示す中、新事業は123%増とさらに大きく伸びています。ただ、新事業への先行投資が巨額なため、赤字は拡大しています。

 同社は企業と顧客をSNSで繋ぐプラットフォームを運営しており、レストランに関しては手数料のほか、経営、流通などに関するコンサルティングを行っており、これが重要な収益源の一つとなっています。

 また、ラストワンマイルの輸送力について、出前で培った速度、量の両面からの大きな強みがあります。生鮮食品、生花、衣料品など多様なオンライン販売への業容拡大が期待されます。

 同社は加盟店に対する独占禁止法違反や、配達員に対する労務管理改善といった行政指導を受けていて、それが株価の押し下げ要因となっています。

 しかし、同社のビジネスモデルは、都市のみならず、農村でも大きなチャンスがあるとみており、共同富裕による郷村振興政策の強化はビジネスチャンスの拡大につながると予想しています。